"夫の死後、最後のお別れすら奪われた私" 第2話
伏せられた目元は赤く腫れ、膝ので握りしめたいハンカチを濡らしていた。
……誰? あのが、夫の『しい女』? 、美が連れてきたような若いとは、まるで似ても似つかない。
だが、私の線を完全に凍りつかせたのは、その女性の姿ではなかった。
その女性のすぐ隣。 パイプ子に腰掛け、女性の肩にそっとを添えている物。
「……美穂?」
声が、掠れて消えた。
娘の美穂だった。 先、結婚式を挙げたばかりの、私のたったの娘。 私がパート代を切り詰め、夫の顔を窺いながら、切に育てげてきた娘。
美穂は、その見らぬ女性の背を優しくさすりながら、提げバッグからティッシュを取りして渡していた。 まるで、傷ついた実の母親を介抱するかのような、自然で親密なつきだった。
「み、ほ……?」
もう度、呼んだ。 今度は、自分でも驚くほど乾いた音がからた。
美穂の肩が、びくりとねがった。 ゆっくりと振り返った娘の顔から、さっと血の気が引いていくのが見えた。 私と目がった瞬、美穂は怯えたように目を泳がせ、それから逃げるように線をへと落とした。
どうして? なぜ、あなたがそこにいるの? なぜ、私の隣ではなく、見らぬ女の隣で、そんな顔をしているの?
のが真っになり、元がぐらりと揺れた。
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倒れそうになる私の肩を、美のたい指先がく突き放した。
「今さら来たって遅いのよ。あのが、お兄ちゃんの最初の奥さんなの」
最初の、奥さん。
その単語のが、脳のひだに染み込むまでに、何秒もの空が必だった。
「……何、を言っているの?」
「聞こえなかった? 佳代さんよ。兄が代の初めに結婚していた、本当の奥さん」 美は嘲笑を浮かべたまま、私の元に唇を寄せた。 「あんたと結婚するにね、お兄ちゃんには別の庭があったの。子どもだって産ませてたのよ。あんた、も緒にいて、何つらされてなかったんでしょう? かわいそうに」
。 半世紀というが、元から音をてて崩落していく覚がした。
私が健さんと見いで会ったのは、歳のだった。 穏やかで、数はないけれど誠実な。そう聞かされていた。 初婚だと、聞かされていた。 戸籍謄本を取り寄せたとき、夫の欄に婚の記載などなかった。 いや、違う。本の戸籍は、転籍や改製をえば、過の婚姻歴を隠すことができる。夫は、私と結婚する直に本籍を移していた。あのときの「続きの都」という言葉を、私は疑いもせずに受け入れていたのだ。
。 私は何と緒に暮らしてきたのだろう。
義父が寝たきりになったとき、美は「仕事が忙しい」
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「の世話なんて無理」と言って実に寄り付きもしなかった。 毎おむつを替え、褥瘡を防ぐために体を拭き、義父を取ったのは私だ。 「ゆみさん、すまないねえ、ありがとうねえ」と泣く義父のを握りながら、計をやりくりし、夫のさな務の帳簿を伝い、美穂を学までした。
そのすべてのの裏側に、別の女と、別の庭がしていた?
「嘘よ……」 「嘘だとうなら、戸籍でも何でも取り寄せて見ればいいじゃない」 美が先で笑う。 「お兄ちゃんが最に会いたがったのはね、佳代さんと、息子の直くんだったのよ。あんたじゃないの。あんたはただの、始末係。介護との雑用が終わったから、お兄ちゃんも元の鞘に収まりたかったのよ」
式内の親戚たちが、巻きに私たちを見ていた。 ひそひそとした囁き声が、針のように皮膚に突き刺さる。 『あれが、追いされたほうの奥さんね』 『の奥さんのほうが、やっぱり落ち着いてるわね』 『子どもも派に育ってるらしいし……』
無責任な世体の目が、私を異物として排除しようとしていた。
そのとき、祭壇のでをげていた佳代という女性が、ゆっくりと顔をげた。 私と、目がった。
勝ち誇ったの目ではなかった。 嘲笑も、蔑みもなかった。 そこにあったのは、ひどく疲弊した、どこか怯えるようなだった。
彼女は私の喪と、震える指先をじっと見つめ、それから痛ましそうに唇を噛み締めて、再び線を落とした。