"妊娠十二週、民政局前の裏切り" 第6話
「これで……すべて完ね」
謝言は類を受け取り、痛ましげな差しで彼女を見つめた。
「予……君はかつて、全世界にち向かう勇気を持った才デザイナーだった。それなのに、あんな男のために自分を殺し、耐え忍ぶ必などどこにもない。君自の誇りと、そのお腹に宿る命のために、必ず彼らに相応の代償を払わせてやるんだ」
「ええ……先輩。もう度と、振り返らないわ」
翌の午、移の最の辺理を終えた予が横断歩に差し掛かったその、運命の歯が狂い始めた。
猛スピードで交差点に突っ込んできた暴が、歩へと乗りげてきたのだ。
「危ないッ!」
鳴とともに衝撃がった。吹きばされた予はいアスファルトに叩きつけられ、腹部にった激痛に界がく滅した。
すぐ隣では、偶然通りかかっていた何凡も巻き込まれ、鳴をげてに倒れ伏していた。
「う、うあああっ! お腹が……赤ちゃんが痛いぃぃっ!」
何凡の絶叫が響き渡る、現に急してきた陸衍淮のが急した。ドアを蹴破るようにしてびしてきた陸衍淮は、血のに倒れる予の姿を認めて絶叫した。
「阿予ッ! しっかりしろ、阿予!」
陸衍淮は震えるで予を抱き起こそうとした。予の太ももを伝って、鮮血がとめどなく流れ落ちていた。
広告
「い、衍淮……助けて……私のお腹の……」
予がか細い声を絞りしたその瞬、救急隊員が駆け寄ってきて叫んだ。
「陸総! 何凡さんの容態が危険です! 激しい腹痛と量血が止まりません! 刻もく病院へ搬送しなければ母子ともに助かりません!」
何凡が涙を流して陸衍淮の首にしがみついた。
「衍淮……私の子を……あなたと私の子を助けて……!」
陸衍淮の腕が、激しく震えた。駆けつけた謝言が陸衍淮の胸ぐらを掴み、鳴りつけた。
「陸衍淮! 何を迷っている! 予は君の妻だぞ! 子宮から量血しているんだ、刻の猶予もない!」
陸衍淮のスマートフォンがけたたましく鳴り響いた。画面には『父』の文字。スピーカーから号が漏れる。
『衍淮! 凡の腹にいるがの跡継ぎに何かあったら、貴様の相続権はすべて剥奪だ! 絶対に子供をなせるな!』
陸衍淮の瞳に、激しい葛藤と狂気が渦巻いた。
「阿予……すまない、しだけ耐えてくれ……!」
陸衍淮は予のを振り解き、何凡を抱きかかえて救急へとび乗った。
「陸総、病院の術は現、緊急対応でつしか空いていません! どちらの処置を優先しますか!?」
医師の緊迫した問いかけに、陸衍淮は目を血らせ、絶叫した。
「凡だ! 凡を先に術へ入れろ!!」
ストレッチャーのでその宣告を聞いた予の目から、筋のい涙が零れ落ちた。
広告
かつて彼が囁いた言葉が、の奥で呪いのように霊する。
『何が起きても、俺は君を選ぶ。君こそが、俺の涯で最もした女性だから――』
(嘘つき……)
予の識は、底れぬ暗の底へと沈んでいった。
術の扉が閉ざされ、数の術を経て目を覚ました予のに、を着た護師が痛ましげな表でっていた。
「……気がつかれましたか」
予は震えるで、平らになってしまった自分の腹部に触れた。たい触。そこに宿っていたさな命の温もりは、跡形もなく消えっていた。
護師は目を潤ませ、声で囁いた。
「本当に、お気の毒に……あともうし処置がければ、助かったかもしれないのに……。旦様は、もう方の妊婦さんの処置を優先されて……」
「……いいえ、結構です」
予は涙を流さなかった。彼女のは、すでにすべてのを削ぎ落とした氷の彫刻のようにえ切っていた。
予は点滴の針を自らので引き抜くと、痛む体を起こし、サイドテーブルにあったメモ用に数の文字をらせた。
『薬はデスクのの引きしにある。蔵庫の段目には酔い止めのスープを凍らせてある。のプレゼンのには、顔が悪く見えるグレーのスーツは着ないで。……さようなら、陸衍淮。私たちは、度と会うことはないわ』
の薬指から結婚指輪を抜き取り、メモのに静かに置くと、予は病をて、迎えに来ていた謝言のへと乗り込み、そのまま空港へと向かった。