"22年育てた継娘の挙式前夜、親族席を奪われた母" 第13話
私は悠太くんからのを静かに引きしにしまい、作業机に向かった。窓のには、抜けるようなの青空が広がっている。
テーブルのには、展示会用の特別な作品が並んでいた。古い着物のを解き、現代なシルエットにまれ変わらせたジャケット。破れたアンティークレースを繕い、息を吹き返したドレス。
すべて、誰かにとってになり、捨てられかけた布たち。それに私の両で、もう度、しい命を吹き込む仕事。
私のも、きっと同じだ。のために使い潰されそうになったを、今、自分ので縫い直している。
のが柔らかく差し込む曜の午。
私のアトリエで、さな展示会がかれていた。『繕いと再の仕事展』。
、コミだけで私の元に通い続けてくれた顧客たち、そして所のセレクトショップのオーナーたちが、とりどりの作品をに取って嘆の声をげていた。
「真理子さん、このステッチ、本当に見事ね」「この古い反物が、こんなにモダンなジャケットになるなんて……魔法みたい」
来客たちの温かい笑顔に包まれながら、私はお茶を配っていた。かつて夫や娘の顔を窺いながら淹れていたお茶ではない。自分の仕事と、自分のをしてくれるたちへの、謝のお茶。
その、入りのガラスドアのカウベルが、チリンとさく鳴った。
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混みの隙から、見覚えのあるがっていた。なブラウスにを包み、化粧気のない顔で、おずおずと内を覗き込んでいる若い女性。
美咲だった。
かつての華やかでが儘だった娘の面は、どこにもなかった。入れのき届いていない髪、し痩せこけた頬。周囲の客が私の作品を褒め称える声を、美咲は息を潜めるようにして聞いていた。
彼女の胸元には、さなバッグが抱えられていた。その隙から、い布が覗いている。
あの、麻のハンカチだった。
美咲は展示された作品をつつ、い入るように見つめていた。ミシンの縫い目、縫いのまつり縫い、布の端の始末。幼い頃からずっと、自分のや持ち物に施されていた、あの丁寧な技術。
『わたしのお母さんは、品師みたいです』
かつて自分が作文にいた言葉が、美咲の胸の奥でどんな音をてて響いているのか、私には痛いほどよく分かった。
美咲は作品のでち尽くし、肩を震わせていた。涙が零れ落ちそうになるのを、必に堪えている。元のいハンカチを広げようとして、しかし、その刺繍の文字が目に入ったのか、躊躇うように握りしめた。
『美咲が幸せでありますように。母より』
その祈りは、嘘ではなかった。あの瞬、私は確かに、母親としてこの子の幸福を願っていた。
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けれど、しているからといって、踏みにじられていい理由にはならない。
美咲はやがて、客が途切れたタイミングを見計らい、恐る恐る私の方へ歩み寄ってきた。
「……いらっしゃいませ」
私が静かに会釈すると、美咲の目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「お母さん……」
美咲は声にならない声で呟き、元のハンカチを両で差しそうとした。
「私……これ、毎持ってるの。……毎、見てるの」
美咲の指先が、ガタガタと震えている。
「悠太さんのご実で、どんなに辛くても……誰にも認めてもらえなくても……この刺繍を見ると、お母さんのがいされて……。私、本当に取り返しのつかないことをしたんだって……」
美咲は々とをげた。客たちの線が集まるのも構わず、ただひたすらに、に向かってをげ続けた。
「ごめんなさい……。お母さんのを、お母さんのを、あんなに踏みにじって……本当にごめんなさい……!」
内が静まり返った。カウベルの微かな揺れと、美咲の嗚咽だけが響く。
私は美咲を見つめた。りはない。けれど、駆け寄って抱きしめ、涙を拭ってやるも、私のにはもうしなかった。
「顔をげて、美咲さん」
私の静かな声に、美咲が涙に濡れた顔をげた。期待と、怯えが混ざりった、縋るような瞳。
「あなたの謝罪は、受け取ります」
美咲の顔に、パッとが差しかけた。
だが、私の続く言葉が、そのを優しく、そして決定に遮った。