みかん小説
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"22年育てた継娘の挙式前夜、親族席を奪われた母" 第2話

「細かいことにこだわるなよ」

夫が吐き捨てるように言った。

「謝の言葉なんて、誰に向けたって形だけのセレモニーだろ。せっかくの美咲のれ台を、おのくだらない嫉妬で台無しにする気か? 器のさい女だな」

器のさい女。 尽くした結果が、その言だった。

胸の奥で、何かがパチンと音をてて千切れた。 りでも、しみでもない。 まるで真の井戸をから被ったような、静かで、え切っためた覚。

私はく息を吸い込んだ。 の震えは、いつのにか完全に止まっていた。

私はアイロン台のに置かれたいハンカチを丁寧に折りたたみ、桐の箱へと収めた。

「わかったわ」

顔をげ、をまっすぐに見つめた。

「は、かない」

美咲の顔に、あからさまな堵のが広がった。 夫は満そうにを鳴らし、「最初からそう言えばいいんだ」と笑った。

は、私がいつものように『物分かりのいい母親』として引きがったのだと信じ込んでいる。 波をてず、娘のために自分を押し殺したのだと。

違う。 私がりたのは、の結婚式だけではない。

美咲と夫が部をていき、リビングへ戻っていく音が聞こえた。 廊の向こうから、夫の嫌の良さそうな声が微かに漏れてくる。

「これでは、本物の族だな」

ドア越しに届いたその言葉を、私はの奥で、たく反芻していた。

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夜。 静まり返ったので、私は、作業部のかりをつけていた。

畳ほどのさな部。 壁面に並んだとりどりの糸巻き、使い込まれた業用ミシン、裁断机。 、私がこので細々と続けてきたのリフォームと仕ての仕事だ。

夫は昔から、私の仕事を「遣い稼ぎの内職」と見していた。 けれど、美咲の私の学費も、学の入学の部も、私がこのミシンを踏み続けて稼ぎしたおからている。

引きしの奥から、冊の茶いファイルを取りした。

挟まれていたのは、黄ばんだ原稿用。 美咲が学のときにいた作文だった。

タイトルは、『わたしのお母さん』。

『わたしのお母さんは、品師みたいです。 やぶれたスカートも、さくなったワンピースも、ミシンで魔法みたいにかわいく直してくれます。 夜おそくまでカタカタ音がしていると、わたしはして眠れます。 血はつながっていないけど、わたしにとって世界でたったのお母さんです』

授業参観の、誇らしげにこれを読みげた美咲のさな姿を、今でも鮮に覚えている。 涙を堪えながら拍をした私の元へってきて、「お母さん好き」と抱きついてきた、あの細い腕の触。

あれから。 あの子は、その『魔法』も『世界でたった』という言葉も、すべてゴミ箱に捨てる決断をしたのだ。

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「……本物の、族、ね」

声にしてみると、乾いた笑いが漏れた。

実母に席を譲ること自体が、許せなかったわけではない。 もし美咲が、事にきちんと相談してくれていたら。 「お母さん、由紀子さんにも謝を伝えたいから、で並んで座ってくれない?」と言ってくれていたら。 私はんで、隣の席をそのに譲っただろう。

けれど美咲が選んだのは、隠蔽と排除だった。 そして夫が選んだのは、の踏みにじりだった。

は気づいていない。 私が『お母さん』という役割をりた瞬、このにおけるの活がどうなるのかを。

私はクローゼットから、頑丈な段ボール箱をつ引っ張りした。 傷に浸っているはない。

まず箱に詰めたのは、仕事具のすべて。 母の形見の裁ち鋏、特注のアイロン、価なレース、顧客の寸法データが入った付けハードディスク。 これらはすべて、私の血と汗で買い揃えた、私の財産だ。

次に、本棚の奥に隠してあった黒いバインダーを引き抜いた。

に入っているのは、このの『登記事項証』の写し。 そして、に壁と回りを全面リフォームした際の、数百万円にのぼる事請負契約と、私の個座からの振込細だった。

夫の隆之は、このを「自分が親から相続した婚特財産だから、おには文の権利もない」

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