"十三通の退職届と百七回の着信" 第6話
「13分です。」
私は封筒を見た。
角が揃っている。
12でいたものではないと、その揃い方で分かった。
私は落ち着いて尋ねた。
「理由を伺ってもいいですか?」
黒田さんは即座に答えた。
「先代がくなったからですよ。」
黒田さんは膝にを置いた。
黒田さんは胸を張って言った。
「俺はね、先代ので32やってきた。先代のを守るためにここにいたんだ。」
黒田さんはし顎をげた。
「その先代がいなくなった。それだけのことです。」
私は畳に膝をついて封筒の束を元に寄せた。
私は黒田さんの目を見た。
「引き継ぎの期は今までですか?」
黒田さんは膝を崩して座り直した。
黒田さんはどうでもいいように答えた。
「今までです。」
私は封筒の束から目をげた。
「今の昼に7回忌の座敷が入ってます。」
私は周囲の顔を見渡した。
「12様です。」
黒田さんはで笑った。
「そりゃ女将さんがなんとかするんでしょう。」
黒田さんのろで誰かがさく笑った。
誰が笑ったのかは分からなかった。
私は広全体に向かって言った。
「11の宴会が11件、12は29件です。」
私は言葉に力を込めた。
「暮れのきい席が続きます。その方たちにはどう申しげればいいでしょう?」
黒田さんは吐き捨てるように言った。
「りませんよ。俺はもうここのじゃない。」
畳の目を数えるくらいのがあった。
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私は膝をついたまま13の顔を順に見た。
柚君が膝のでを握っている。
仲居の子の1は袖を指でつまんだままかない。
私は彼らに向かって問いかけた。
「皆さんもですか?」
返事はなかった。
私はもう度聞いた。
「皆さんもですか?」
誰も私と目をわせない。
畳に落とした線がそのままがってこない。
藤堂さんが咳払いをした。
藤堂さんがし気まずそうに言った。
「まあそういうことです。」
黒田さんが引き取った。
黒田さんは胸を張って宣言した。
「俺たちはしいをやる。」
黒田さんは背を伸ばして私の方を見た。
「駅だ。もう物件は押さえてある。」
黒田さんは自信満々に言葉を区切った。
「1ヶにはける。ので32やった俺のだ。この連も俺についてくると言ってくれてます。」
私は封筒の束を膝の横に置いた。
私は静かにをいた。
「ののお客様は……」
黒田さんが片方のの端をげた。
黒田さんは遮るように言った。
「俺の客だよ。」
黒田さんは指で座敷を指した。
「あの座敷に何をしてきたとってる?この町でのの名が通ってるのは料理がうまいからだ。」
黒田さんは自分の胸を叩いた。
「その料理を作ってきたのはこの俺だ。」
私は何も言わなかった。
黒田さんはちがってを腕にかけた。
広の入りの方へ歩いていき、そこで振り返る。
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黒田さんは私を見ろして笑った。
「このもこれで終わりだな。」
黒田さんは勝ち誇った顔をした。
「32だ。俺がこのをどうやって回してきたか、あんたには分からんだろう。」
私は黒田さんの顔を見た。
胸の辺りがくなっていた。
ここで泣いてをげれば何かは残るかもしれない。
柚君は残るだろう。
仲居の子も2くらいは残る。
そうった。
それでも私は半の、板に入るたびに見てきたものをいしていた。
若いの顔が季節ごとに入れ替わっていく。
あの入れ替わりは私が引き止めたところで止まらない。
私は膝の横の封筒を畳に残してちがり、広の柱にをかけた。
私は真っ直ぐに黒田さんを見て言った。
「分かりました。」
黒田さんが歩にた。
「それだけか。」
私は柱にをかけたまま答えた。
「皆さんが決めたことですから。」
黒田さんのが半分いたまま止まった。
言い返されるとっていたのだろう。
るか泣かれるか。
そのどちらかの返事を用していたはずだ。
用したものがきをなくした顔をしていた。
黒田さんは顔をしかめて吐き捨てた。
「で泣きついても遅いぞ。」
私は静かに頷いた。
「はい。」
残りの12が順にちがった。
畳を踏む音、襖をける音、玄関で靴をす音が順番にざかっていく。
柚君が最にていく、1度だけ振り返った。
何か言いかけてを閉じて、そのまま廊へ消えた。
音が消えた。