"十三通の退職届と百七回の着信" 第2話
26歳の柚君は震えるで名簿を直そうとしていた。
黒田さんの声が控えのに響いた。
「お、何ここにいる?」
柚君は縮みがりながら答えた。
「3です。」
黒田さんは鋭い線を柚君に突き刺した。
「3いても並べられんのか。板に戻れ。今はもうをすな。」
柚君は名簿を置いてていった。
座敷には親戚も客も残っていた。
私は黒田さんの横へき、声をかけた。
「黒田さん、今はみんな気が張っています。」
黒田さんは私を見もしない。
黒田さんはたい声で言い放った。
「板のの育て方は、板のが決めることです。」
それだけ言うと黒田さんは背を向けて廊を歩いていった。
翌の葬儀で、私は決定なものを聞いた。
焼の列が途切れた頃、黒田さんが同業のと話しているのが聞こえた。
廊の柱を挟んですぐろに私がいるとは、黒田さんもっていなかったのだろう。
黒田さんは得げな声をした。
「俺はな、先代がここにいたんだ。」
相が何か言った。
黒田さんはで笑って答えた。
「娘さんはホテルで働いてただけだろう。料理も作れん。素だ。」
相の相槌を待たずに黒田さんは言葉を継いだ。
「そのお遊びの経営に、俺がいつまでも付きうとうか。」
私はそのをかなかった。
32勤めたの言葉だ。
父を送るに言い返す話ではない。
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そうって座敷へ戻った。
黒田さんはのの若い者を並ばせて棺を送った。
板の5と仲居が5とが1ずつ。
をげる列は綺麗に揃っていた。
あの並びを作れるのは黒田さんだけだと、私は本気で信じていた。
父の骨を拾いながら、私は父の癖をいしていた。
父はくを見るような目でよくにしていた。
「を守っとるのは1の料理じゃない。」
子供の頃から父が繰り返し言っていた言葉だ。
を考えたことはなかった。
父はいつもこの言葉のを続けなかった。
葬からへ戻ると、商のが数残っていた。
が私に気遣うように言った。
「変だな。これからどうする?」
私がをくに、黒田さんが座敷へ入ってきた。
黒田さんは胸を張って宣言した。
「板は今まで通り俺が回します。」
黒田さんは商のたちを見渡した。
「ののは変わりません。」
商のたちは、ああそれならだという顔で頷いた。
そのは、このがいてくれて良かったとった。
今から考えると、あので頷いた全員が同じい違いをしていたことになる。
その帰り、のろの席で帳の静さんがをいた。
静さんは66歳。
父の代から30、ののと帳面を見てきただ。
静さんはし躊躇うように言った。
「板さんのことですが。
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」
私がルームミラー越しに尋ねた。
「何ですか?」
静さんはしばらく窓のを見ていた。
町の川がゆっくりろへ流れていく。
静さんは線を戻して言った。
「いえ、今はやめておきます。」
私は静さんの横顔を見た。
「気になります。」
静さんはし寂しそうな目をした。
「先代が、わしが見とるから言わんでいいと。」
静さんは膝のでをねた。
「30そう言われてきたものですから。」
静さんはそれきりを閉じた。
私も聞かなかった。
父を焼いたに、のの話をしたくなかったからだ。
は川沿いをった。
30言われてきたという言い方だけがに残った。
葬儀の翌朝、私は喪を脱いでへた。
忌の張りはまだ玄関にかかっている。
それでも仕込みだけはかさないといけない。
3には法事の座敷が2つ入っていた。
板の戸をけると、包丁の音が止まった。
私はを見渡して言った。
「おはようございます。」
返事はあった。
煮方の藤堂平さんがく応じた。
「はい。」
55歳。
煮方は煮物と椀を受け持つ役で板の次にい。
黒田さんの次に古いになる。
の4は元から顔をげない。
柚君もその隣の子も、まな板を見たまま挨拶を返した。
私は挨拶を3度繰り返して板をた。
背に黒田さんの声が聞こえた。
「余計なを利くな。仕事しろ。」
誰に言ったのかは分からない。
板の音がまたき始めた。
忌だから静かなのだとったけれど、その静かさには覚えがあった。