"十八年間消えていた夫の保護者席要求" 第10話
美咲が画面を取りし、ロックを解除する。 私もわず、その画面に線を落とした。
差は、佐藤健だった。 あの卒業式の以来、切の連絡を絶っていた元夫からの、いメール。
『美咲へ。 おの言う通りだった。会社の社内報の件は断った。 おがまれた、俺がいなかったこと。16歳のメールを無したこと。 全部、俺のさと勝さのせいだ。 父親らしいことは何ひとつできなかったが、おのしい活をくから祈っている』
言い訳も、見栄も、虚勢も削ぎ落とされた、たった数の文章。
美咲はその画面を数秒だけ見つめた。 りも、憐憫も、涙もなかった。 ただ、静かに源ボタンを押し、画面を暗転させた。
返信はしなかった。 許したわけでもない。 ただ、その事実を受け止め、過として置きりにしたのだ。
「こうか、美咲」
玄関で靴を履いた父が、の鍵をジャラリと鳴らして呼んだ。
「うん!」
美咲はきなリュックサックを背負い、軽やかな取りで玄関のドアをけた。 には、ひとつない抜けるような青空と、の柔らかなが吹き抜けていた。
*
父がいなかった18を、私は幸だったとはわない。
運会には、るのが苦な私を応援するために、母が始発で所取りをしてくれた。 をした夜は、祖父が古い軽トラックをばして病院まで連れてってくれた。
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模試の判定が落ちて泣きそうになった夜、母は何も言わずに温かい豚汁を作ってくれた。
私のには、最初から、ちゃんと本物の族がいた。
父親であることと、父親としてきてきたことは、同じじゃない。 血がつながっていることよりも、々の暮らしので注がれたこそが、を育てるのだとっている。
これから先、あのとどんな距になるのかは、まだわからない。 会わないかもしれないし、いつかい未来に言葉を交わすが来るのかもしれない。
けれど、もう迷わない。
私はもう、誰かにされるのを待つだけの、無力な子どもじゃない。 されて育った確信を胸に、今度は私が、私のを選び取っていく。
【番編】
4旬。学の講義が始まって、ちょうど2週が経った。
鷹のワンルームアパート。夕暮れになると、武線の踏切の音が規則正しく窓を揺らす。狭いキッチンの流し台には、母が持たせてくれた琺瑯の鍋がつ。には、作り置きのきんぴらごぼうの残りがし。
机のに置いたノートパソコンの横に、真しい文庫本サイズのノートをいた。誰に見せるわけでもない、18歳の私の記。
――あのから、父からの連絡はない。
あの卒業式ので、束を抱えたままち尽くしていた佐藤健という男の姿は、私の記憶ので急速にを失い始めている。
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けれど、々ふといすのは、18の空そのものではなく、16歳のあのののことだ。
*
20253。都の格発表の。自分の受験番号を見つけた瞬、隣にいた母はさく元を押さえて、そのにしゃがみ込んで泣いた。
「よかった……本当によかった、美咲」
袋をした母の指先は、の寒さと毎の仕事で、あかぎれが赤く裂けていた。パートの事務仕事を掛け持ちしながら、夜は所の個塾の送り迎えをしてくれた。格を番んでくれたのは、駅のロータリーで古い軽トラックのエンジンをかけたまま待っていたおじいちゃんだった。
「よし、今は寿司だ。番いいやつを頼むぞ」
そう言って、おじいちゃんは分い財布から皺くちゃの1万円札を何枚も取りした。
その温もりので、私は確かに幸せだった。自分が誰よりもされて育ったという自覚もあった。
けれど。その夜、自分の部で制の採寸表を眺めていた、の奥底で、ずっと蓋をしてきたさな黒い滴がポツリと落ちた。
――お父さんは、今どこで何をしているんだろう。
りではなかった。みでもなかった。ただの、果てしない好奇と、ほんのしの寂しさ。
友だちの何かは、父親と仲が悪くても利かないと言っていた。「うちの親父、マジでウザい」と愚痴るクラスメイトの言葉を聞くたび、私はいつも曖昧に笑って相槌を打っていた。