"十八年間消えていた夫の保護者席要求" 第6話
お母さんのアルバムには、私がまれたの写真が何枚もある。病院のベッドで、私を抱いてるお母さんと、おじいちゃん。でも、お父さんの写真だけが1枚もないの。まれただけじゃない。1ヶも、お宮参りも」
「美咲、それは……」
「張だったって、お母さんは昔言ってたよね。急な仕事で本にいなかったって。でも、あのがさっき言った『昔アメリカにった』っていう自話の調、すごく引っかかったの」
美咲の指先が、テーブルので微かに震えていた。
「お母さん。あのがアメリカにいたのって……私がまれたなの?」
言葉がなかった。 18、私が頑なに隠し続けてきた真実。 美咲が「自分は父親に祝福されてまれてこなかった」といらされることを恐れて、私が墓まで持っていこうと決めていた記憶。
けれど、18歳になった娘は、もう誤魔化しを受け入れる子どもではなかった。
私はい取りでちがり、寝のクローゼットへと向かった。 奥の袋から、埃をかぶったさな鉄の箱を引っ張りす。
鍵をけると、には18の領収の束、公正証の控え。 そして、茶封筒に入った2枚の写真。
リビングに戻り、私はその茶封筒を美咲のに置いた。
「……お母さんはね、あなたに嘘をつきたくなかった。でも、これをあなたに見せることが、あなたを傷つけることになるのが怖かったの」
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美咲は無言で封筒を受け取り、から2枚の写真を引きした。
1枚は、20085の付が入った、産院のベッドの私と美咲。 顔が青く、点滴の針を刺した私の腕ので、真っ赤な顔をして眠るまれたばかりの美咲。 横で、慣れないつきで美咲のに触れようとしている父の姿。
そして、もう1枚。
カリフォルニアの突き抜けるような青空の。 青いサッカーユニフォームを着て、若い女の肩を抱き寄せ、カメラに向かってビールを掲げて笑う佐藤健。
に刻印されたデジタルカメラのタイムスタンプは、2枚とも、寸分違わず同じ付を示していた。
美咲の線が、2枚の写真を交互にき来する。 写真を持つ美咲の指先が、く血の気を失っていくのを、私はただ祈るようないで見つめることしかできなかった。
2枚の写真は、リビングのテーブルのに並べられたまま、微だにしなかった。
計の秒針がカチリとむ音だけが、鳴りのように響く。 美咲は泣いていなかった。 声をげることも、写真をに叩きつけることもしなかった。 ただ、の親指の爪を、もう片方ののひらにきつくい込ませていた。
「……これ、私」
美咲が指差したのは、青い私の胸ので、しわくちゃの顔をして眠る赤ん坊。 2008514、午742分。
そして、その隣。 青いユニフォームを着て、若い女と肩を並べ、青空のでビールカップを突きしている元夫。
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タイムスタンプは、同じ2008514、現午318分。
差を計算するまでもなかった。 私が陣痛に耐え、父が廊でをわせていたまさにその瞬、あの男はを越えた異国ので、と歓声をげていたのだ。
「美咲……」
私が伸ばしかけたを、美咲はそっと押し戻した。 拒絶ではなく、自分自のでとうとする仕だった。
美咲はポケットからスマートフォンを取りすと、テーブルのの球の写真を、真から静かに撮した。 ブレひとつない、徹なつきだった。
「何をするの?」
私の問いに、美咲は答えなかった。 ただ画面を操作し、メッセージアプリをいた。 先ほどファミレスで交換したばかりの、元夫のアカウント。
そこに、たった今撮った球の写真を添付した。 添えられたメッセージは、わずか。
『この、私がまれたことをっていましたか?』
送信の矢印をタップした瞬、美咲の喉の奥から、さく息が漏れた。 それだけだった。
1分も経たないうちに、美咲のスマートフォンが激しく振し始めた。 テーブルのでブーブーと狂ったように暴れ回る端末の画面には、『佐藤健』の文字。
美咲は迷わず、スピーカー通話のボタンを押した。
『美咲! お、何なんだこの写真は! どこでに入れた!』
受話器の向こうの元夫の声は、完全にずっていた。
ファミレスで見せていた営業部の余裕など、欠片も残っていない。