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"十八年間消えていた夫の保護者席要求" 第1話

「美咲のの卒業式、俺も席するから。父親なんだから保護者席を用しろ」

スマホのスピーカーから流れてきたその声を、私はすぐには自分の元夫のものだと認識できなかった。

18。

文字にすればたったの3文字。 けれど、それはまれたばかりの赤ん坊が、派なへと育ちがるまでの果てしないだ。 その、養育費の支払いは数で滞り、誕の言すら寄こさなかった男が、液晶画面の向こうで悪びれもせず息を吐いている。

「……健さん?」

私の喉の奥から、乾いた掠れ声が漏れた。

「に誰がいるんだよ。聞いたぞ、美咲が難関の国に受かったんだってな。さすが俺の血を引いてるだけある。あいつのにも関わるだろ。父親が企業の営業責任者だって肩きは、将来の就活でも絶対に箔がつく。式当は俺も列に座るから、学側に席を確保させとけ」

臓が、嫌な音をててねた。

の奥で、カッカと血の巡る音がする。 18と何ひとつ変わっていない。 このは今、美咲がどんな18をきてきたのか、邪を引いた夜に誰が背をさすっていたのか、度も尋ねていない。 にあるのは、「優秀な娘の父親」という都のいい板だけだ。

「……美咲のは、保護者席が1族につき2席までって決まってるの」

努めて平坦な声をした。

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指先が微かに震えているのを、エプロンの端をく握りしめて誤魔化す。

「席は私と、父が入ることになってる。18、あの子の学費も活も緒に支えてくれたのは私の父よ。あなたに渡す席はない」

受話器の向こうで、舌打ちの音がはっきりと響いた。

「お義父さん? もう70過ぎの寄りだろうが。卒業式なんてこれからの脈を見せるでもあるんだぞ。だいたい、実の父親を差し置いて祖父が座るなんて世体が悪いだろ。美咲本に選ばせろ。実の親父が来てくれるって言ったら、んで席を譲るに決まってる」

世体。 またその言葉だ。

18、自分の犯した罪をすべて私と実に押し付け、体裁だけを取り繕って逃げした男が、今さら娘のれ台で世体を語っている。

「美咲は、もう18歳の成よ。あなたの具じゃない」

「父親に向かって具とは何だ! 俺が会いたいって言ってるんだ、親の権利だろ!」

鳴り声をげる元夫の言葉を、私はからざけるようにして、通話終の赤いボタンを押した。

ツツツ、と途切れた子音が、静まり返ったリビングに虚しく落ちる。

の先から、すうっと血の気が引いていくのがわかった。 キッチンにち尽くしたまま、私は荒くなった呼吸を必にえる。 換気扇の回るい音だけが、部を満たしていた。

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どうして、今なの。

美咲がどれだけの努力をして、夜遅くまで机にかじりついて、あの格通を掴み取ったとっているのか。 その果実だけをもぎ取りに、なぜこの男がで踏み込んでくるのか。

界の端で、リビングのサイドボードに飾られた写真てが目に入った。 美咲が3歳の頃。 所の公園で、転んでだらけになった膝をさすりながら、私のカメラに向かって笑っている写真。 その隣には、し背の丸くなった私の父、田誠が、器用そうに美咲のを撫でている姿が写っている。

この18のどこを切り取っても、元夫・佐藤健の姿はしない。

あの男が最に私の目のにいたのは、2008の初。 まだ美咲が、私のお腹のにいただった。

*

20085。 臨を迎え、いつ陣痛が来てもおかしくない状態だった私を残し、夫は玄関できなトランクのファスナーを引いていた。

「どうしてもせない張なんだ。会社にとってもきなプロジェクトだから、俺が抜けるわけにはいかない」

私の腹は、皮が張り裂けそうなほどに膨らんでいた。 元すら見えず、靴を履くことすら苦労な妻をに、夫は急かすように腕計を見つめていた。

「産予定はまだ先だろ。急いで帰ってくるから、あとは1で頼むな」

振り返りもせず、属音をててドアが閉まった。

ガチャリ、と鍵が落ちる音が、私の胸の奥にいひびを入れた。

そのトランクのに、スーツやビジネス類など入っていないことを、私はすでにっていた。

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