"「お前は家族じゃない」と言った夫へ" 第4話
「なによその言い。嫁のくせに」
義母は嫌そうに舌打ちを鳴らし、麦茶を気にみ干した。 その顔を見つめながら、私はので静かに呟いた。
――ええ、ただの嫁ですよ。族じゃありませんから。
それから週。 のの空気は、しずつ、けれど確実に変わり始めていた。
私は毎の事の品数を、それまでの「義母専用の減塩別メニュー+正彦の酒の肴+メイン」の品から、ごく普通の庭料理品へと減らした。 文句を言う義母には「物価ですから」とだけ答えた。
正彦は相変わらず、夜遅くに帰宅しては「母さんの嫌が悪いぞ、美智子がちゃんとなだめておけよ」と偉そうに吐き捨てるだけだった。 彼はまだ、自分の元で何が起きているのか、ミリ単位も理解していなかった。
そして、翌の。
そのは、枯らしが吹き荒れる寒い朝だった。
郵便受けに、カタリと音をてて朝刊と郵便物が投函された。 聞を取りにった正彦が、リビングに戻ってくる。
に持った封筒の束をパラパラとめくっていた正彦のが、突然、ピタリと止まった。
「……あ?」
く掠れた声が、喉から漏れた。
正彦の線の先にあるのは、見慣れない青い封筒だった。 差は、義母が利用している民介護サービス会社と、リハビリ専クリニック。
そして、封筒の宛名には、太いゴシック体ではっきりと印刷されていた。
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『ご請求先:佐藤正彦様』
「……なんだこれ」
正彦が審そうに眉を寄せ、封筒の裏を乱暴に引き裂いた。 からてきた請求細を広げた瞬。
夫の顔から、さっと血の気が引いていくのが分かった。
目を見き、顎が微かに震えている。
「おい……美智子……」
震える声で、正彦が私を呼んだ。
私はコーヒーカップをソーサーに静かに置き、ややかな線を、夫の青ざめた顔へと向けた。
「なんの冗談だこれ……? 万……? こっちのもしたら……万……? おい、なんで俺宛てにこんな請求が届くんだよ!?」
静まり返ったリビングに、正彦の裏返った鳴が響き渡った。
私の唇の端が、音もなく微かに持ちがった。
の清算が、ようやく幕をけたのだ。
「……は?」
私のから漏れたのは、呆れを通り越した乾いた笑いだった。
「なんでって、あなたが息子だからでしょう」
湯気のつコーヒーをすする。苦が舌のに広がる。これまでは義母の朝の支度と着替え介助に追われ、めきったものしかめなかった。温かいコーヒーが、こんなに美しいものだとはらなかった。
「バカ言え! そういう話をしてるんじゃない!」
正彦はダイニングテーブルに青い請求を叩きつけた。が擦れる鋭い音がリビングに響く。
「母さんの介護費用は、おが自分の座から引き落としにしてただろ!? なんで俺の名義に変わってるんだよ! しかもなんだこの額は! 計で万千円!? 桁を違えてるんじゃないのか!?」
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「違えてないわよ」
私はちがり、器棚の引きしから分い冊のファイルを引っ張りした。ドサリ、と正彦の目のに落とす。
には、過、毎届いていた民介護サービス会社とクリニックからの領収、そしての引き落とし通帳のコピーが、ごとに几帳面にファイリングされている。
「見てみなさいよ。公保険適用の個別訪問リハビリが万円。保険適用の枠を超えた朝・夜の延見守りと個別調理代が万円。それにオムツや使い捨て袋、医療用補助品の実費が約万円。……計で毎万円。それが、ここの現実よ」
正彦は信じられないものを見るように目を丸くし、ファイルをパラパラとめくった。めくる指が、みるみるうちに張っていく。
「な……なんで、そんなにかかるんだよ……! 母さんのはどうした!? 遺族とわせて万はあるはずだろ!?」
「義母の? あれは義母が自分の美容院代と、お友達との観劇代と、お取り寄せのデパグルメに使っているじゃない。度でも介護費用に入れたことがあった?」
「そ、それは……」
「りない分は全部、私の貯からしていたの。実の父が残してくれた遺産と、私が独代から貯めていた定期預。