"3年墓参りした義父が、古い家の壁の奥で呼んでいる" 第13話
『お父さんへ。 いつも私を、温かく族として迎えてくれてありがとうございます。 器用で至らない嫁ですが、これからもよろしくお願いします。 直子』
。 結婚して最初の父のに、私が渡したカードだった。
すっかり忘れていた。 義母からは「っぽい切れ」とで笑われ、目のでゴミ箱に捨てられそうになったものを、義父が慌てて拾いげて懐にしまったあのの記憶。
義父は、それを捨てずに持っていたのだ。 息子に裏切られ、暗のれにもの閉じ込められ、を奪われていたあの獄のような々の。 このさな箱を、肌さず抱きしめていたのだ。
「……なお、こさん」
義父の掠れた声が、私の胸の最もい所に染み渡っていく。
「わしはな……浩司の嫁だから、おを事にしたんじゃない」
零れ落ちる涙で、義父の顔が滲んで見えなくなった。
「子どもができないと母さんに責められても、で台所で泣きながら……それでも毎朝、誰よりもく起きて、のを雑巾がけしてくれた」
「お義父さん……」
「縁側でお茶をむとき、わしの節くれったを『さんのはかっこいいですね』と笑ってくれた。……おが、直子さんという優しいだったから……わしは、おを本当の娘だとったんだ」
義父の痩せ細ったが、私の頬にそっと触れた。
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乾いた皮膚の温もりが、のたかった孤独を、瞬で溶かしていく。
「もう……あのに、帰らなくていいんだよ」
病の静寂のに、その言葉が落ちた。
「浩司の罪も、母さんの業も……おが背負う筋いは、何つない」
義父は、皺だらけの顔をくしゃくしゃにして笑った。 まるで、娘をしい旅ちへ送りす父親のような、穏やかな笑顔だった。
「婚しても……おは、直子さんだ。自分ので、自分のを歩きなさい。……それが、わしの最の願いだ」
喉の奥から、嗚咽がこみげた。 私は義父の胸元に顔を埋め、子どものように声をげて泣いた。
耐えることが美徳だとい込んでいた。 理尽な仕打ちにをげ、自分を殺して尽くすことだけが、居所を保つ唯の方法だと信じ込まされていた。
違っていた。 私は、ただ「私」としてきてよかったのだ。
かけて、ようやくその呪いが解けた瞬だった。
*
ヶ。
のが、初の匂いを運んでくる季節になった。
駅の雑居ビルにある清法律事務所で、すべての法続きの終が告げられた。
融関への異議申しては正式に受理され、夫が偽造した千万円の連帯保証契約は「無効」と判断された。私に対する債権の請求は完全に消滅した。
浩司さんの会社は破産続きが始され、実のと母は競売にかけられることになった。
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義母と浩司さんは、保護責任者遺棄罪および法監禁罪、さらには正雄さんの預を正に引きした詐欺罪で正式に起訴され、刑事裁判を待つとなっていた。
度だけ、拘置所の浩司から面会を求めるが届いた。 『もう度やり直したい。母さんが悪かったんだ。俺にはおしかいない』 便箋に並ぶ見苦しい懇願の文字を、私は度だけたく見つめ、そのまま破棄した。
署名と押印が完した婚届は、すでに役所に受理されている。
戸籍謄本から「佐藤」の制度の苦しいが消え、私はぶりに、私自のを取り戻した。
義父の今についても、清先が成見として法な続きをすべてえてくれた。 義父に残されていた正当な預とを適切に管理し、緑に囲まれたリハビリ専の介護老保健施設への入所が決まった。
プロの介護士と理学療法士のケアを受け、義父の体調は奇跡な回復を見せていた。 今では子に自力で座り、スプーンを使って自分で事ができるまでになっていた。
私は、郊の静かな宅にさなワンルームマンションを借りた。 当たりのいい向きのベランダ。 さな製のテーブルと、がけのソファ。
パート先だった調剤薬局で正社員としての採用が決まり、朝から夕方まで、自分の力で働き、自分の力で賃を払う活が始まった。
誰の音に怯えることもない。