"3年墓参りした義父が、古い家の壁の奥で呼んでいる" 第10話
「何も分からなかった?」
私の声は、自分でも驚くほど静かだった。
「浩司に言われるがまま、ご飯を運んでただけよ! 私は悪くない! なのに警察にまで連れてかれて……親類にられたら、世体がどうなるとってるの!」
世体。 この期に及んで、からるのはその言葉だけだった。
「先、類を」
私が促すと、清先は鞄から数枚の用を取りし、ちゃぶ台のに叩きつけるように置いた。 融関から弁護士会照会で取り寄せた、過の座取引細だった。
「子さん。正雄さんの座と定期預から、毎規則正しく万円から万円の現が引きされています。引きしの窓伝票の跡は、すべてあなたのものですね」
義母の息が止まった。 顔から、サーッと血の気が引いていく。
「これは……活費よ! 正雄さんのオムツ代や、私の薬代……!」
「で引きされた総額は、千百万円を超えています。その半が、浩司さんの個座への送、そして級ブランド品やエステサロンの支払いに充てられている。これも正雄さんの介護費用ですか?」
清先の徹な指摘に、義母の唇が罠のように震えた。
「正雄さんの実印は、浩司さんが偽造した鍵とともに保管されていました。正雄さんの識がし、判断能力を失っている状態に乗じ、本に無断で財産を費消した。
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これは親族であっても、業務横領、あるいは準詐欺に該当するな法為です」
「ち、違う……! 浩司が、浩司がおが必だって泣きついてきたから……!」
醜い責任の擦り付けい。 夫は警察で「母さんがでやった」と言い、義母はここで「息子に泣きつかれた」と喚く。
これが、私が、をげて仕えてきた「族」の正体だった。
胃の底から、黒い汚のようなものが逆流しそうになる。 私は歩、義母のへ踏みした。
「お義母さん」
「な、何よ……」
「つだけ、答えて」
喉の奥がく焼けていた。 けれど、線は微も逸らさなかった。
「私は、毎欠かさず、あの庭のにを供えていましたよね」
義母の目が、泳いだ。
「のも、猛暑のも、がるも。私はあのたいにをわせて、お義父さんの冥福を祈って泣いていた。お義母さんは、居の縁側から、その私の背をずっと眺めていましたよね」
あの々の景が、脳裏を焼き尽くすように蘇る。
『直子さん、今もご苦労様ね。正雄さんもんでるわ』 そう言って、たい麦茶をしてきた義母の顔。
その、目との先のれのので。 義父はも満に与えられず、糞尿まみれの布団ので横たわっていたのだ。
「あの、何を考えていたの?」
言言、言葉を絞りした。
「きてるのお墓参りをさせて、もの、私にをわせさせて……あなた、どんな気持ちで私を見ていたの!?」
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「ひっ……!」
義母がさく鳴をあげ、ずさりした。
「答えてよ!!」
私の声が、古い本の梁を震わせた。 義母の膝がガクガクと震え、ちゃぶ台の縁に縋り付く。
「だ、だって……しょうがないじゃないの!」
義母のからびしたのは、き直りの絶叫だった。
「浩司が借で首が回らないって言ってたのよ! あなたに本当のことを言ったら、あなたが婚して逃げすって浩司が言ったの! あなたが逃げたら、浩司の会社はおしまいだったのよ! だから……だから隠すしかなかったんじゃないの!」
自分たちの保のために。 息子の見栄のために。
夫の父親をき埋めにし、夫の妻をピエロにして嘲笑っていた。
その、玄関の引き戸が激しく蹴破られるような音がした。
「おい! 何やってんだ!!」
のまま居に崩れ込んできたのは、浩司だった。 警察から解放されたばかりの夫は、スーツの襟元を崩し、乱れた髪ので目を血らせていた。
「直子! お、弁護士なんか連れて実を嗅ぎ回ってんじゃねえよ!」
夫は私の腕を掴もうとを伸ばした。 だが、その腕を清先が横から鋭く掴み、ねじ伏せるように制止した。
「をしなさい、浩司さん。これ以、暴罪をねるつもりですか」
「痛えな! せよ! あんたに関係ないだろ、俺んちの問題だ!」
夫が腕を振りほどき、肩で荒い息をつく。
その線が、ちゃぶ台のに広げられた細の束に落ちた。