"3年墓参りした義父が、古い家の壁の奥で呼んでいる" 第5話
「……な……お、こ……」
「はい、お義父さん。ここにいます。もう丈夫ですから。あんな暗い部には、絶対に度と戻しませんから」
私は義父の骨張ったを、両で包み込んだ。 温もりを伝えようと、必にさすった。
義父の指が、突如として力を込めた。 点滴の針が刺さったままのが、私の首をギリリと掴む。 衰しきっているはずなのに、信じられないほどの力だった。
義父の胸が、激しくする。 何かを、どうしても伝えなければならないという、鬼気迫る執がその瞳に燃え盛っていた。
「お義父さん……? 無理に喋らなくていいです、今は休んで……」
「……ちが……う……」
義父の喉から、痰の絡んだ掠れ声が絞りされる。
「……なま、え……」
「名……?」
義父は首を微かに振ると、私の顔を穴がくほど見つめ、血を吐くような必さで言葉を継いだ。
「直子さんの……なま、えが……つかわ、れた……」
が止まった。
集治療の空気が、瞬で凍りついたようにえ切っていく。
「……え?」
「……浩司……が……おの、名を……」
義父の瞳から、粒の涙が溢れし、皺だらけの頬を伝って枕に吸い込まれていった。
「……すまない……直子さん……わしが……止められ、なかった……」
握られた首に、義父の絶望な震えがダイレクトに伝わってくる。
私の名が、使われた? 浩司が?
何を? いつ? どうして、お義父さんが謝るの?
ので、警報が鳴り響いていた。
夫と義母が隠していたもの。
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義父をんだことにして、あの暗の部にもの、檻のように閉じ込めていた本当の理由。
それは単なる介護放棄でも、遺産目当てでもなかった。
お義父さんがをけば。 私に会って、真実を伝えてしまえば。 その瞬に、すべてが終わるような『何か』を――。
夫は、私の背に背負わせていたのだ。
「直子さんの……なま、えが……つかわ、れた……」
集治療のい井を見げたまま、義父の胸が刻みに波打っていた。
握りしめられた私の首に、骨のさが直接い込む。 痛いほどだった。 声にならない鳴が喉元までせりがり、声帯が引き攣れて音にならない。
私の名? 浩司が、私の名を……?
「お義父さん、それ、どういうこと……」
問いかけようとした瞬、モニターのアラームが甲く鳴り響いた。 護師が血相を変えてカーテンをねげる。
「血圧が急激にがっています! ご族の方、度へてください!」
押しされるように廊へ弾きされた。 無質な属扉が目のでく閉まる。
廊の気が、汗で湿った背筋を容赦なくやしていった。 膝の震えが止まらない。 っていられず、たい壁に背を預けてズルズルとにへたり込んだ。
のを、義父の擦れた声が何度も、何度もリフレインする。
。 子どもに恵まれなかった私を、夫は「跡取りも産めない良品」
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とで嘲笑い、義母は親族の集まりのたびに座布団すら与えなかった。 それでも耐えられたのは、義父がいたからだ。 「なお子さんは、このを番切にしてくれている」 そう言って、器用なで守ってくれたがいたからだ。
その義父を、夫たちはも暗に閉じ込めていた。 そして義父が、命を削るようにして私に遺そうとした言葉が――『名を使われた』。
悪寒が、胃の底からせりがってくる。 の指先から、急速に血の気が引いていくのが分かった。
朝のが病院のガラス窓をく染め始めた頃、警察から連絡が入った。 夫と義母の柄は、警察署での事聴取を終え、いったん釈放されたという。
「庭内の保護責任者遺弃や法監禁容疑で捜査をめていますが、現段階では任聴取の形を取っています。証拠の精査と、被害者ご本の状態が定して供述調が取れるまで、柄の拘束は継続できません」
受話器の向こうの刑事の声は、悔しそうに滲んでいた。 本の警察構の限界だ。 庭内の介護トラブルという形を装われると、らかな密であっても、即座に逮捕状を請求して拘置所に放り込むのは極めて困難だった。
あのが、野に放たれた。
嫌な予しかなかった。 私は病院の化粧でで顔を洗い、タクシーを拾って自宅へと急いだ。
自宅といっても、義父が「くなった」直、夫に引に転居させられた賃貸アパートだ。