"3年墓参りした義父が、古い家の壁の奥で呼んでいる" 第3話
「血圧、酸素投与始します!」
隊員たちの緊迫した声の横で、私は義父のたいを握り続けた。
義父の識は、混濁していた。 けれど、私ののひらの温もりをじたのか、ピクピクと指先をかした。
どうして。 どうしてこんなことになったの。
私ののに、の記憶が濁流のように押し寄せていた。
*
〇、。
元で、筋骨隆々としていた義父が、脳梗塞で倒れた。 命は取り留めたものの、半に麻痺が残り、言葉がうまくなくなったと聞かされた。
私は病を申した。 の結婚活で、子どもができなかった私を度も責めず、実の娘のように慈しんでくれた義父に、恩返しがしたかった。
だが、夫と義母は頑なに私を病に入れなかった。
「親父はおので無様な姿を見せたくないんだよ」 夫はそう吐き捨てた。
「気の利かない嫁がうろうろしてたら、正雄さんのストレスになるだけよ」 義母はたく言い放った。
そして倒れてからわずか週。 「方の専リハビリ病院に転院した」と告げられた。
面会謝絶の厳しい施設だから、族でも決まった曜しかけない。 費用はいが浩司と私で何とかするから、直子さんはをさないで。 そう言われ、病院の名すら教えてもらえなかった。
それからヶも経たないうちに、夫から話があったのだ。
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『親父が、急変してくなった』
が真っになった。 駆けつけようとした私を、義母が話で激しく制止した。
『密葬にしたから。正雄さんの遺言なのよ、誰にも見られずに静かに逝きたいって。直子さん、あなた来なくていいから』
骨げすらち会わせてもらえなかった。 戻ってきた夫のには、さな桐の箱すら握られていなかった。
「遺骨はな、親父が希望してた葬のところに預けてきた。おが気にする必はない」
夫はそう言ったきり、度と義父のの詳細を語ろうとしなかった。
そして庭の隅に、義父が好きだったという形のが置かれた。 『ここを正雄さんの供養のにするから』
私はその言葉を、寸の疑いもなく信じてしまったのだ。 なんて愚かだったのだろう。 なんて取り返しのつかない抜けだったのだろう。
私が「お墓」だとってを向けていたの、目との先。 あのれの暗で、義父はずっと息をしていた。 助けを求めていた。 私の音を、絶望ので聞いていたのだ。
*
搬送先の学病院の救命救急センター。
義父は直ちに集治療へ運ばれ、私は廊のい子に座り込んでいた。 のひらにこびりついた埃と異臭が、現実のみを突きつけてくる。
ほど経った頃、荒々しい音が廊に響いた。
顔をげると、肩で息をする夫・浩司と、派なスカーフを巻いた義母・子さんがっていた。
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義母の顔はを叩きすぎたように青く、夫の額には脂汗がっていた。
「直子! 親父はどうなった!?」
夫が詰め寄ってくる。 その瞳は、父親の否を気遣うなど微もなく、ただ恐怖に泳いでいた。
「……処置よ」
私はちがることすら惜しむように、見げたまま答えた。
「浩司さん。お義母さん」
「な、何よ」 義母が怯えたようにスカーフの端を握りしめる。
「お義父さんの、診断はどこにあるの?」
「は……?」
「葬許証は? 埋葬許証はどこ? 、どこの葬でお義父さんを焼いたの?」
私の乾いた問いに、の呼吸が止まった。
廊の蛍灯が、チカチカと気に滅している。
「な、何を馬鹿なことを言ってるのよ、この嫁は!」 義母がヒステリックに声を裏返した。
「そんな昔の類、どこに片付けたか覚えてるわけないじゃない! 浩司、何とか言いなさいよ!」
「そ、そうだぞ直子! 病院の類なんて、続きが終われば捨てるだろ普通! なんでそんな警察みたいな尋問をしてくるんだよ!」
夫が声を荒らげる。 昔からそうだ。この男は、やましいことがあると必ず鳴って相を威圧する。
だが、今の私には、その号がれな負け犬の吠えにしか聞こえなかった。
「捨てるわけないでしょ」
私は歩、夫にづいた。
「戸籍はどうなってるの? 届をしていれば、除籍謄本にが記載されるはずよ。