"遺品を捨てられた妻✕翌朝土下座する義母" 第10話
自業自得という文字以、この女にかける言葉など持ちわせていなかった。
翌朝、午過ぎ。
玄関の鍵が荒々しくき、夫が戻ってきた。 晩どこかで酒をんでいたのだろう。饐えたアルコールの匂いと煙の煙の匂いを全にまとわせ、ネクタイを引きちぎるようにしてリビングに入ってきた。
そのには、昨夜とは違う、しい類の束が握りしめられていた。
「おい、真由」
夫の目は血り、頬はげっそりと削げていた。 追い詰められたの、凶暴な焦燥が全からちっている。
「産に連絡した。買いがもう見つかったそうだ。今にこの委任状にサインして、実印を押せ。そうすれば付として百万が週けに振り込まれる」
テーブルのに叩きつけられた類には、『専任媒介契約』と『売却同』の文字。
私はダイニングチェアに座ったまま、類には線すら向けなかった。
「サインはしません。昨も言いました」
夫の顔が、瞬で気によって赤黒く染まった。 テーブルを両で激しく叩く。 ドン、と鈍い破裂音が部を震わせた。
「いい加減にしろ! 俺の会社が潰れてもいいのか!? お、自分の夫が破滅するのを指くわえて見てる気か!?」
「あなたの会社がどうなろうと、母のとは無関係です」
「無関係なわけあるか! 俺たちは夫婦だぞ! 族だろ!」
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夫は私の腕を掴もうと、乱暴にを伸ばしてきた。 私は子をし引き、そのをたく避けた。
「族だからこそ、母親の医療費だと嘘をついて百万円を騙し取ったんですか?」
夫のきが、ピタリと止まった。 伸ばされた腕が宙で凍りつき、泳ぐような線が私の顔から逸れる。
「な……何を――」
「お義母さんの携帯のデータ、全部見せてもらいました。あなたが母からを引っ張るよう指示した文面も、私の病気をでっちげるよう頼んだメッセージも、すべて撮して保してあります」
夫の喉仏が、きくした。 額から、たらりと筋のや汗が顎へと伝い落ちる。
「……あのお袋、余計な真似を……」
絞りすようない呟き。 そこには、母親へのなど欠片もなかった。 あるのは、自分の保の梯子をされたことに対する、底れぬ憎悪だけだった。
夫はギリリと奥歯を噛み締め、突然、嘲笑うような歪んだ笑みを浮かべた。
「……だから何だっていうんだよ」
掠れた声が、徐々にき直ったようなトーンへとがっていく。
「はお袋の座に入ったんだ。警察がこうが民事になろうが、お袋が勝にやったって言い張れば、俺には傷つ付かないんだよ! そんな脅しが通用するとうな!」
「そうですね。類はそうかもしれません」
私はちがり、背にあるインターホンの受話器を取った。
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エントランスの呼びし音が鳴るのと、ほぼ同だった。
「だから、専に入ってもらいました」
オートロックを解除するボタンを押す。
夫の眉がピクリとねた。
「……誰を呼んだ」
「母がに相談していた、弁護士の宮本先です」
数分、玄関のチャイムが鳴り、仕てのいいスーツを着た宮本弁護士がリビングに入ってきた。 には分い革のブリーフケース。 その落ち着き払った音を聞いた瞬、夫の顔から急速に血の気が引いていくのが分かった。
「初めまして、拓也さん。森田真由さんの代理を務めます、弁護士の宮本です」
宮本先は礼すると、テーブルのに類を通、然と並べた。
「まず通目ですが、真由さんのお母様が遺された産についての『相続登記完証』の写しです。すでに名義は森田真由さん単独に変更されており、ご主の同や売却の権限は、法に切介入できません。今、無断での売却や担保設定の試みがあれば、直ちに法措置を講じます」
夫は息を呑み、テーブルのの類を睨みつけた。
「そして通目」
宮本先はもう枚のを指先で滑らせた。
「真由さんのお母様から正に引きされた百万円に関する、当利得返還請求および法為に基づく損害賠償請求の事通です。
お母様、子さんの証言、ならびに昨保全いたしました通信記録により、ご主が主導して実された詐取為であることはです」