"遺品を捨てられた妻✕翌朝土下座する義母" 第7話
「の朝には、実印をしてもらうからな。逃げられるとうなよ」
私は振り返らず、暗い窓ガラスに映る夫の醜い輪郭を、ただややかに見つめていた。
翌朝、夫が仕事へかける音を確認した瞬、私はコートを羽織った。
昨夜、隠しておいたビスケット缶をきめのトートバッグの底に滑り込ませる。 ずっしりとした属のみが、肋骨のあたりに鈍く当たった。
向かった先は、方都の駅にある雑居ビルだった。 曇りガラスのドアに『宮本法律事務所』の文字。 昨、夫の声を聞きながら、震える指先でスマートフォンから予約を入れた所だった。
「なるほど……これは、かなり悪質ですね」
応接の革張りのソファで、歳の宮本弁護士が鏡の奥の目を細めた。 テーブルのには、母の納帳、百万円の受領、そしてあの産査定の写真。
「まず提として確認しますが、お母様が残されたご実は、真由さん単独の相続財産です。配偶者であるご主には、売却の同を迫る権利も、勝に名義を変更する権限も切ありません」
弁護士のく落ち着いた声が、張り詰めていた私の神経をしだけ緩めてくれた。
「どれほど急かされようと、真由さんが署名捺印を拒否し続ければ、産もをせません。法な盾は完全にあなた側にあります」
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「でも……この百万円は」
私は、義母の署名がある受領を指先で押さえた。
「用途を『真由の緊急医療費』と偽って母から受け取っています。これを取り戻すことはできるでしょうか」
「当利得返還請求、あるいは法為に基づく損害賠償請求の対象になり得ます。ただ、問題は資の流れです。義母の座に入った、実際にどこへ消えたのか。ご主が『義母から個に借りただけだ』としらを切った、責任の押し付けいになる能性があります」
責任の、押し付けい。
その言葉が、の奥にたく残った。
事務所をた、私はもうつの所へ向かった。 夫が経営する宅リフォーム会社の、経理業務を部委託されている松井さんの事務所だった。 結婚当初、夫の確定申告の類を届けるために何度か顔をわせており、温で実直な柄をっていた。
突然の訪問に、歳の松井さんは驚きながらも、私のお腹を気遣って温かい麦茶をしてくれた。
「……奥さん、拓也社から何か聞いていますか」
松井さんは類の束から線をげ、くため息をついた。 守秘義務の壁はある。だが、婚や財産分与を提とした法な係争が始まれば、隠し通せる数字ではなかった。
「、百万円の運転資のズレだと聞いています」
私がそう告げると、松井さんは苦い顔で首を横に振った。
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「そんな易しいものじゃありません。会社の現の未払債務は、計で約百万円です」
数字を聞いた瞬、息が止まりそうになった。
百万円。
「半にも百数万の資が個勘定から補填されていましたが……焼けにでした。資材の騰と過の施良の補償がなり、今、週以内にどうしても支払わなければならない買掛が、約百万円あります」
百万円。 それが、夫が焦り狂っていた本当の理由だった。
「その期を過ぎれば、取引先から形を回され、取引が止します。事実の倒産です。社は今、あらゆる策にり回っているはずです」
点と点が、残酷な本の線で繋がった。
母から騙し取った百万円は、すでに半に消えていたのだ。 そして今、首に巻かれた縄が限界まで締まり、息ができなくなった夫は、母の遺品である千百万円のを丸ごと呑み込もうとしている。 すべてを自分の見栄と延命のために。
夕方、い取りでマンションに戻ると、穏な空気が廊にまで漂っていた。
玄関をけた瞬、複数の靴が並んでいるのが見えた。 義母のパンプスだけではない。見覚えのある、夫の親戚筋の革靴。
リビングのドアをけると、煙の煙と澱んだ気が押し寄せてきた。
「あ、帰ってきた」
ソファに座っていた夫の叔父が、眉をひそめて私を見げた。