"遺品を捨てられた妻✕翌朝土下座する義母" 第6話
には、税理士から送られてきた過の決算や、の融資関連のファイルが並んでいる。 その隙に、昨夜夫がカバンからそうとしていた茶い封筒と同じものが挟まれていた。
指先を滑り込ませ、引き抜く。
からてきたのは、さ数ミリのA4用の束だった。 表には、産仲介業者のロゴマーク。 『産価格査定報告』。 対象物件は、母が遺した、あの造階建てのだった。
査定額:千百万円。
私の線は、その額ではなく、表の片隅にさく印字された付に吸い寄せられた。
作成:令。 受任:令。
血の気が、さあっと引いていく音が聞こえた。
……?
昨の、。 その付を、私が忘れるはずがなかった。
母が入院していた学病院のカンファレンスルームで、主治医から「余命はもって半です」と宣告された、まさにそのだった。
たい廊で、私はっていられなくなって泣き崩れた。 あの、夫は私の肩をく抱きしめ、こう言ったのだ。 『真由、しっかりしろ。俺がついてる。お義母さんのことも、おのことも、俺が全力で支えるから』
あの言葉に、私はどれほど救われたか分からなかった。 このと結婚して本当によかったと、涙で滲む界ので、から夫に謝したのだ。
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だが、現実は違っていた。
あの男は、病院の廊で泣きじゃくる私の背をさすりながら、そので産へ話をかけていたのだ。 まだ息をしている母のが、いくらで売れるかを計算するために。 母のを待ちにし、くに変えるための準備を、あの瞬から始めていたのだ。
の震えが止まらなかった。 の端が、クシャリと音をてる。
しみなど、もう欠片も残っていなかった。 胸の奥底で渦巻いていたのは、徹なまでの殺にも似た軽蔑だった。
この男は、ではない。 族を装った、ただの捕者だ。
私は査定の付と依頼者欄――はっきりと夫の氏名が記された部分をスマートフォンで撮し、元の位置に狂いなく戻した。 引きしを音もなく閉め、部の気を消してリビングに戻る。
脱所から、夫がバスタオルで髪を拭きながらてくる音がした。 私はスマホを握りしめたまま、ベランダへと続く窓のにち、暗い夜空を見つめた。
このまま夫を問い詰めても、「将来のためだった」と見え透いた言い訳をねるだけだ。 私はく息を吸い、画面の通話履歴をいた。
義母の番号をタップする。
呼びし音が回鳴った、恐る恐る受話器を取る気配がした。
「……もしもし」
掠れた、怯えた声。
「お義母さん、真由です」
私はを切交えず、氷のようにたい声で告げた。
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「納帳も見ました。百万円、母の座からお義母さんの座へ回に分けて振り込まれた記録も、すべて揃っています。用途を偽って齢者からを巻きげるのは、法にどういう扱いになるか、ごですか?」
話の向こうで、ヒッと息を呑む音が聞こえた。 数秒の沈黙の、義母の声が急激に濁り、やがて逆したような声へと変わった。
「な、何よ! 脅す気!? 息子を助けるために親が恵を絞って何が悪いのよ! 拓也が困ってたのよ! 嫁の母親なら、娘の夫の会社を助けるのが当たりじゃない!」
「母は、私の医療費だと信じて渡したんです」
「結果は同じでしょうが! どうせあのはくないって分かってたのよ! どのみちんでいくのなんだから、きている私たちが使って何が悪いのよ!!」
受話器の向こうから叩きつけられたその言葉は、のからたものとはえなかった。
どのみちんでいくの。
私の全の毛穴がき、たいりがのてっぺんまで突き抜けた。 けれど、声は議なほど震えなかった。
「……よく分かりました」
「ちょっと、真由さん! 待ちなさいよ、真由さ――」
通話終のボタンを、静かに押した。
夜がベランダのガラスをガタガタと揺らしている。 背から、ビール缶をけるプシュッという鈍い音がリビングに響いた。
「おい、真由」
ソファーに座った夫が、赤いインクのついた印鑑マットをテーブルのに放り投げる音がした。