"遺品を捨てられた妻✕翌朝土下座する義母" 第3話
のようにくなった皮膚ので、頬の肉がピクピクと痙攣している。
「……あ、けたの?」
声が震えていた。 昨の傲な声とは別のような、擦れた、怯えきった声。
「けたの、を!? 見たの!?」
「まだけていません。部に置いたままです」
私がそう答えた途端、義母の喉からヒッ、とい息が漏れた。 そして、私の首を掴もうと両を伸ばしてきた。 そのは尋常ではないほどたく、脂汗で湿っていた。
「しなさい。今すぐ、私に渡しなさい!」
「どうしてですか。母の遺品です。お義母さんには関係ないはずです」
「関係あるのよ! 縁起が悪いの! の持ち物なんて、お腹の子に障りがあるに決まってるじゃない! 私が……私が責任を持ってお寺でお焚きげしてもらうから! 買い直してあげるわよ、もっと綺麗で派なメモリアルボックスを、私がいくらでも買ってあげるから!」
まくしたてる言葉の端々から、隠しきれない焦燥と狂気が漏れしている。 関係ないが、の母親の錆びたビスケット缶に対して、ここまで取り乱すはずがない。
「断ります。これは母が残してくれたものです。誰にも渡しません」
私がたく言い放ち、歩ろにがっただった。
どさっ、とい音が玄関に響いた。
理解が追いつかなかった。 界から義母の姿が消え、気がつくと、義母は玄関のたいタイルのに両膝をついていた。
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……は?
言葉がなかった。 あの、常に私を見し、「これだから片親の娘は」と嘲笑ってきた義母が。 息子である夫を溺し、自分こそがこのの絶対な支配者だと信じて疑わなかった女が。
両をタイルのにつき、額を擦り付けるようにして平伏していた。 座だった。
「お願い……頼むから……」
義母の肩が、激しくに揺れている。 伸ばされた皺だらけの指先が、私の履いているスリッパの端を縋るように掴んできた。
「悪かったわよ。昨は私が悪を言ったわ。謝る。いくらでも謝るから……! だから真由さん、お願いだから、その缶だけは……」
涙とでぐしゃぐしゃになった顔をげた義母が、絶望に満ちた目で私を見げていた。
「絶対に、けないでちょうだい……!」
背筋を、氷がツーと伝い落ちていくような悪寒がった。
ただのガラクタであるはずがない。 ただのいの品であるはずがない。
この女をここまで追い詰め、プライドをかなぐり捨てて座させるものが、あの錆びた缶のに眠っている。 母が、の直に私へと遺した箱のに。
私は義母のをたく振り払った。
「どいてください」
「真由さん! 待って、お願い、真由さん!!」
背から叫び声をげ、縋り付こうといがってくる義母を無し、私はリビングへと歩いた。 クローゼットから段ボールを引きし、底からあのたいビスケット缶を取りす。
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ガラステーブルの央に、ドン、と音をてて置いた。
義母がうようにしてリビングの入りまで追り、テーブルのの缶を見た瞬、鳴のような喘ぎ声を漏らした。 「やめて……やめてええっ!」
私は缶の蓋の縁に、指をかけた。
の、母が何をい、この錆びた箱を押し入れの奥に忍ばせていたのか。 なぜ、義母はこの箱のをった途端に奪いり、捨てようとしたのか。
指先に力を込める。 キィ、と錆びた属が擦れう、鈍く障りな音が静寂を切り裂いた。
赤茶のがテーブルに散り、く閉ざされていた蓋が、れた。
に入っていたのは、宝でも、現でもなかった。 輪ゴムで几帳面に留められた数枚の領収の束。 汚れ、角の擦り切れた母のさな納帳。 そして、番に置かれていた、つ折りにされた便箋。
その便箋の表面に、太いペンで記された文字が、真っ先に目にび込んできた。
『受領』
私は震えるで、そのを広げた。
そこにかれていたのは、まぎれもない事実を記した、徹な数字と名だった。
『森田様より 弐佰陸拾万円(2,600,000円) 真由の緊急医療費および入院活補填費として、確かに受領いたしました。 今の精算につきましては、用途内訳を提示のうえ対応いたします。
令 受領者:子 印』
血の気が、音をてて引いていくのが分かった。