"七年越しに再婚する私✕見知らぬ子と失踪夫" 第11話
その言葉が落ちた瞬、浩の顔から最の理性が吹きんだ。
都のいい父親の演技も、劇の主公のポーズも、すべてが崩壊した。
男は顔を真っ赤にしてテーブルにを乗りし、剥きしの敵を娘に叩きつけた。
「……じゃあ何だ!? 助けないって言うのかよ!」
唾を撒き散らしながら、浩が喚いた。
「お、弟を助ける気があるのかないのか、どっちなんだよ! グダグダ言わずに結論をせ! おが検査を受けなきゃ、あの子はぬんだぞ!」
化け物の本性が、完全にわになった瞬だった。
自分の嘘が暴かれた屈辱を、すべて娘への恫にすり替えて喚き散らす男。
私は結のにちはだかり、浩をたく睨みつけた。
だが、結は私の腕を優しく押し留めた。
そして、浩ではなく、隣に座る理さんに向き直った。
「理さん」
理さんが、涙で濡れた顔をげた。
「私は、悠斗くんのドナー検査を受けます」
部にいた全員が、息を呑んだ。
浩の顔に、劣な堵の笑みが浮かびかけた――その瞬、結のたい声がそれを断ち切った。
「ただし、条件があります」
結は浩を瞥もしないまま、理さんと医師に向かって告げた。
「悠斗くんの病気のこと、必な検査のことは、すべて理さんと先から直接聞きます。私は、この男をには挟みません」
「……なっ!?」
広告
浩が目を見いた。
「そして、私が検査を受けるのは、この男のためでも、姉としての義務でもありません。ただ、苦しんでいる歳の子どもに対して、私にできることがあるならりたいという、私自の選択です」
結はそこで初めて、浩に線を向けた。
その瞳の底には、完全な拒絶の壁が築かれていた。
「お父さん。あなたはもう、悠斗くんの病気を使って私を脅すことはできない。私の体も、私のも、あなたが指図できるものは何つない」
父親というを使って娘を操る。
その唯の武器を、結は自らので々に打ち砕いたのだ。
「ふざけるな……! 親に向かって何様のを――」
「浩さん、そこまでです」
ソーシャルワーカーがの警備員を伴って割って入った。
「これ以の威圧為は過できません。退してください」
浩は警備員に腕を掴まれ、けなくもがきながら廊へと引きずりされていった。
「せ! 俺は父親だぞ! 結! お、悔するぞ!」
喚き声が、防音ドアの向こうへとざかっていく。
静寂が戻った面談で、理さんが声をげて泣き崩れた。
「結ちゃん……ごめんなさい……本当に、ありがとう……」
結は理さんの震える背に、そっとを添えた。
その横顔には、の呪縛を自ら断ち切ったの、凛としたさがあった。
それから数。
広告
結はの授業のを縫って、正規の医療順に則った精密検査と、倫理委員会による独した面談を受けた。
浩からの連絡は、私と誠さんので完全に遮断した。
そして、週末の午。
私たちは再び、学病院の面談に呼ばれていた。
私と結、そして理さん。
い扉がき、悠斗くんの主治医である教授が、冊の分いカルテを抱えて入ってきた。
医師の表は、ひどくく、沈んでいた。
々と礼し、子に腰をろした医師が、静かにをいた。
「さん、林さん。結さんのHLAタイピングの解析、ならびにドナー適格性の最終評価がました」
沈黙が、く部を支配した。
医師の鏡の奥の瞳が、私たちをまっすぐに見つめた。
「結論から申しげます」
主治医の静かな声が、張り詰めた内に落ちた。
「結さんの血液検査、ならびにHLA(血球の型)のタイピング結果を確認いたしました。結さんは、悠斗くんのドナーとして適格ではありません」
内が、シンと静まり返った。
「……え?」
理さんが息を呑んだ。
結はきつせず、両を膝のに乗せたまま、医師の言葉をじっと受け止めていた。
「検査の結果、悠斗くんと結さんのHLA型は半分も致していませんでした。異母同胞であるため予測はされていましたが、これでは移植をっても極めてい拒絶反応やGVHD(移植片対宿主病)を起こすリスクがすぎます。
医学に、結さんから骨髄や末梢血幹細胞を採取することは絶対にできません」