みかん小説
本棚

"七年越しに再婚する私✕見知らぬ子と失踪夫" 第10話

スマートフォンの画面を浩の目のに突きつけた。

昨夜、結に送りつけた凶悪なテキストが、のに晒される。

「なっ……」

浩は息を呑み、歩ずさりした。

「それは……親としての、のあまりというか……し言葉が過ぎただけで……!」

「いい加減にして!」

理さんの鋭い声が、狭い面談に響き渡った。

理さんは両をテーブルに叩きつけ、涙を浮かべながら浩を睨みつけた。

「あなた、私に何て言ったの!? の奥さんと娘さんは、に交通事故で即したって……自分だけがき残って獄を見たって、泣きながら私に嘘をついたわよね!?」

浩の肩が、びくりとねがった。

「そ、それは……昔の辛い記憶を、おに背負わせたくなくて……」

「嘘をつかないで!」

今度は私がちがった。

子の脚がを擦り、鈍い音をてる。

「、活費も養育費も全部持ち逃げして姿を消したくせに、何が辛い記憶よ! 結には『お母さんが会わせてくれない』と吹き込み、理さんには『事故でんだ』と嘘をつき……どちらの庭でも、自分だけがな被害者のふりをしてきてきたんでしょう!」

浩の額に、嫌な汗がじっとりと滲みていた。

逃げのない密。

自分がかけて築きげてきたつの嘘が、正面から激突し、々に砕け散っていく。

「……何なんだよ」

浩の元が、醜く歪んだ。

広告

取り繕う仮面が剥がれ落ち、底にある卑劣なが剥きしになる。

「何なんだよ、おら! 俺を責めて何になるんだ!? 悠斗がにかけてるんだぞ! あの子の命を助けるために、俺がどれだけをげて、どれだけ必でいてきたとってるんだ!」

浩は結を指差し、鳴り散らした。

「結だって族だろうが! 血の繋がった弟を見殺しにするのか!? 母親のくだらない私怨に付きって、助けられる命を捨てる気か! 悠斗がんだら、おら全員、殺しと同じだぞ!」

病院の壁が震えるほどの声。

どこまでも「子どもの命」を盾にして、自分を正当化し、周囲を脅迫する悪。

同席していたソーシャルワーカーがちがり、「さん、声をすなら警備員を呼びます」と制止に入った。

けれど、その必はなかった。

ずっと俯いていた結が、ゆっくりと顔をげたからだ。

娘の瞳には、昨夜までの怯えは微もなかった。

ただ、静かで、透き通るようなたさだけが宿っていた。

「お父さん」

結の声は、驚くほど静かだった。

浩が言葉を詰まらせ、娘を見ろす。

「……なんだよ、結。おなら分かってくれるだろ? お父さんはおのことも――」

「つだけ、答えて」

結は浩の目をまっすぐに見据えた。

その線は、待ち続けた父親を見る目ではなく、ただの見らぬを観察する目だった。

広告

「もし、悠斗くんが病気じゃなかったら……お父さん、私に会いに来てくれた?」

面談の空気が、シンと静まり返った。

計の秒針の音だけが、やけにきくに響く。

浩の唇が、引き攣るようにいた。

「え……?」

「答えて」

結は逃げを許さなかった。

「、私の唱コンクールを講堂のろから見ていた、お父さんは声をかけずに帰った。悠斗くんがいて、しい族がいて、幸せだったから。私がいなくても、お父さんのは何の困りもしなかったから」

浩の喉が、ヒュッとさく鳴った。

「もし、悠斗くんが健康で、何の病気もしていなかったら……お父さんは、私に会いに来た? 『おを忘れたはない』って、言いに来てくれた?」

浩は答えられなかった。

線を宙に彷徨わせ、何か言い訳を探すように唇を震わせる。

数秒の沈黙。

その沈黙こそが、歳の娘にとって、これ以ないほどで残酷な「答え」だった。

「そ、それは……」

浩が掠れた声で搾りした。

「おが歳になったら……落ち着いたら、いつか会おうと……」

「嘘」

結は、静かに言い切った。

「歳になっても、私が結婚しても、お父さんは来なかった。悠斗くんが病気になって、私の体が必になったから、いしただけ」

「結、違う! お父さんは――」

「もう、いいよ」

結の目から、筋の涙が頬を伝って落ちた。

けれど、その声は度も震えなかった。

「お父さんは、私に会いたかったんじゃない。悠斗くんを治すための『部品』が欲しかっただけなんだね」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: