"七年越しに再婚する私✕見知らぬ子と失踪夫" 第5話
話の向こうから聞こえる理さんの呼吸は浅く、今にも過呼吸を起こしそうに乱れていた。
「ええ……浩さん、会った頃からずっとそう言っていました。『のの夜、型トラックとの追突事故で、妻も、歳だった娘も即だった。自分だけがき残ってしまった』って……」
言葉がない。
喉の奥がカラカラに張り付いて、呼吸の仕方を忘れてしまったようだった。
、計の貯をすべて持ち逃げし、携帯の番号を変えて忽然と姿を消した夫。
警察に捜索願をし、親戚ををげて回り、それでも方が分からず、何もかけて庭裁判所で失踪宣告の続きをめた。
娘が泣き叫ぶ夜を幾度も越え、ようやく法律のでも婚姻関係を解消して、を向こうとしたあの々。
その裏で、あの男は別ので「劇の遺族」を演じていたのだ。
妻と娘を交通事故でくした、で誠実な男。
そうやっての同を買い、しい女性に擦り寄り、子どもを作り、のうのうと暮らしていた。
「……理さん、落ち着いて私の声を聞いてください」
私は自分の太ももをくつねりながら、できる限りい声で受話器に告げた。
「私は今、きてあなたの話を受けています。そして娘の結も、私の目ので、歳になって息をしています」
話の向こうで、ヒッ、と息を呑む音がした。
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続いて、布が擦れるような音と、押し殺した嗚咽が漏れ聞こえてくる。
「嘘……じゃあ、私が見ていたあのは……、私に何を……」
「今すぐ、会えませんか」
私は言った。
「悠斗くんの病気のこともあります。あのがあなたに何を言い、私たちに何をしてきたのか、度すべて突きわせる必があります」
指定したのは、学病院からで分ほどの距にある、国沿いのファミリーレストランだった。
平の夕暮れ、内は所の主婦や学でまばらに埋まっていた。
ドリンクバーの械がく唸る音と、るいポップスのBGM。
その番奥のボックス席に、理さんは座っていた。
代半ば。
化粧気のない顔は気で、目のには濃い隈が張り付いている。
テーブルのに置かれた両は刻みに震えていて、指先の爪はく噛み切られていた。
い病気の子どもを抱えて、どれほど眠れない夜を過ごしてきたかが、目で分かった。
「……、真紀さんですか」
私が席のにつと、理さんは弾かれたようにちがり、々とをげた。
「座ってください」
私が向かいに座ると、理さんはバッグから冊のいアルバムを取りした。
表には、子ども向けの物のシールが貼られている。
私もバッグから、役所で発してもらった戸籍謄本の写しと、当の警察への捜索願の受理票の控えを取りし、テーブルの央に置いた。
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理さんの線が、のに落ちる。
そこには、浩の名と、私の名。
そして、失踪宣告によって除籍されたという公な記載が、厳な文字で刻まれていた。
「これ……」
「浩さんは、事故に遭ってなどいません」
私は淡々と事実を告げた。
「のある朝、スーツケースつでをて、そのまま戻らなかっただけです。私たちは捨てられたんです」
理さんは両で顔を覆い、肩を激しく震わせた。
「信じられない……。私、あのが毎、命だって言ってでどこかへかけるのを、ずっと静かに見送っていたんです。『まだの傷が癒えないんだ』って、胸が痛んで……」
……命?
呆れ果てて、りすら通り越して寒気がした。
しない妻と娘の命を作りげ、そのはおそらくパチンコか競馬にでもっていたのだろう。
「理さん、アルバムを見せていただけますか」
理さんは震えるでアルバムをき、枚の写真を抜きして私のに差しした。
「これ……見てください」
写真のに写っていたのは、の空の、テーマパークの巨なゲートのにつ浩だった。
焼けした顔で、満面の笑みを浮かべている。
腕のには、まだよちよち歩きの歳くらいの悠斗くん。
隣で理さんが、幸せそうに寄り添っていた。
写真の裏側には、ボールペンで几帳面にかれた文字があった。
『悠斗とで、初めての族旅。