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"夫の死を告げられた夜、届いた私の熟睡写真" 第14話

「弟は……繊細な男でした」

祭壇の脇にった正彦が、喪の襟を正し、集まったほどの親族や取引先に向かって々とをげていた。 目元を濡らすような仕をしながら、その声には片の揺らぎもなかった。

「引く況と、庭内での度なるすれ違い……。精神に追い詰められ、発作に阪へ向かい、自ら命を絶つような形で事故に遭いました。すべては、兄である私の監督き届きです。どうか、弟の始末をお許しください」

列席した親族から、忍び泣く声が漏れた。 「あんなに優しかった直さんが」「奥さんがもっと支えてあげていれば」 あちこちから投げられる線が、針のように私の背に突き刺さる。 世体という名の、無で残酷な同調圧力。

私の隣に座っていた義母が、ハンカチを目元に当てながら、膝ので私の喪の袖をく引いた。 顔をづけてきた義母の息から、湿ったミントのりがした。

「……由紀さん、は持ってきたわね」 囁く声は、涙声とはまるで別物の、く濁った脅迫だった。 「正彦の挨拶が終わったら、遺族の代表としてあなたがにつのよ。『夫の鬱病に気づけず申し訳ありませんでした』って、親族全員のでをげなさい。あのにサインして、すべてを終わらせるの。それが、川の嫁としての最の務めよ」

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義母のが、バッグから取りした級な蒔絵の万を私の膝のに押し付けてくる。

私は、膝のの万を見つめた。 そして、ゆっくりと顔をげた。

「……お義母さん」

「何よ。く受け取りなさい」

「阪府警の、体検案はどこですか?」

義母のが、ピクリと止まった。

声を荒げたわけではない。 ただ、静まり返った斎ので、私の声は自然なほど透き通って響いた。 正面で神妙な顔を作っていた正彦の線が、鋭くこちらを射抜く。

「な……何を言ってるのよ、こんな席で」 義母が狼狽し、声を潜めて私の腕を抓るように握った。 「遺体は損傷が激しかったって言ったでしょう! もう荼毘に付されたの!」

「では、葬許証を見せてください」

私はちがった。 子の脚が、フローリングをく擦る音が鳴る。 親族たちの線が斉に私に集まった。

「がくなれば、医師による診断か、警察の体検案が発されます。役所に届を提しなければ、葬許証はません。そして、葬をうには配偶者である私の同と類の提が法に必なはずです」

私は祭壇へ向かって歩、歩みた。 黒いリボンの奥で笑う、夫の遺を見据える。

「正彦さん。直さんはどこの斎で葬されたのですか? どこの役所に、誰が届をしたのですか? ……交通事故の事故証は、どこにあるのですか?」

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親族たちのざわめきが、急速に広がっていく。 「どういうことだ?」「葬に奥さんがち会っていないのか?」

正彦の顔から、営業用の痛な笑みが消え失せた。 眉をく歪め、股で私に詰め寄ってくる。

「由紀さん、取り乱すな! 内の幸で気が転しているのは分かるが、ここは直を静かに送るだ。席に戻れ!」

正彦の太いが、私の肩を力任せに掴もうとした、その瞬だった。

ドォン!

斎のな両きドアが、暴力な音をてて側から蹴破られた。

属のラッチが弾けび、たいのがホールへ吹き込む。 参列者の鳴ががり、全員が振り返った。

逆の入りにっていたのは――の男だった。

汚れたウインドブレーカーの裾をで濡らし、伸び放題の無精髭を蓄え、腕を雑な包帯で吊った男。 肩で荒い息を乱暴に吐きし、血った目で会を見渡している。

「……直、……?」

親族の誰かが、信じられないものを見るように呟いた。

義母のから、ヒッとい鳴が漏れた。 腰が砕けたようにそのへへたり込み、ハンカチを落としたでを塞いでいる。

「な……直……?! お、なんで……」 正彦の顔から、完全に血の気が引いていた。 肌が気に変し、喉仏が激しくしている。

祭壇のに飾られた遺の男が。 んだはずの男が、をねげながら、自分の告別式の通を歩いて入ってきたのだ。

「兄貴……!」

直の声は、憎悪と恐怖でひび割れていた。

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