みかん小説
本棚

"夫の死を告げられた夜、届いた私の熟睡写真" 第13話

狂気じみた鳴り声がファミレスの静かな角に響き、周囲の客がギョッとしてこちらを振り返った。

私は無言のまま、通話終の赤いアイコンをタップした。

指先はもう、震えていなかった。 ただ静かに、その番号を着信拒否に設定した。

「……川さん、丈夫ですか」 咲良さんが配そうに私の顔を覗き込んできた。 「ええ。目が覚めました」

私たちはそので、所轄の警察署の刑事課へ向かった。 交通鑑識の担当者、そして災事故を追っていた犯係の刑事が同席した。 咲良さんが持参した姉のメッセージ履歴、そして私が提したSDカードの映像データと、指示の原本スキャン。

データを確認した配の刑事が、く息を吐きした。 「……これは、単なる失ではありませんね。業務過失致、並びに証拠隠滅、犯隠避の疑いで、捜査本部をちげます。川直、および川正彦の両名について、事聴取の令状を請求します」

法の続きはきした。 けれど、警察の捜査には裏付けと続きが必だった。逮捕状がるまで、くてもはかかる。

その隙を突くように、川からの「最の撃」が届いた。

翌の曜。 私がを寄せていたビジネスホテルのフロントに、私の旧姓宛てでバイク便の封が届いたのだ。 私の居所を突き止めたのではない。

広告

私が勤める印刷会社の総務部に届いたものを、同僚が慌てて転送してくれたものだった。

差は、川正彦の会社の顧問弁護士の名。

に入っていたのは、のに印刷された枚の案内状だった。

『川 直 儀 追悼の会(偲ぶ会)のご案内』

は、翌の曜、午。 所は、杉並区内にある瀟洒な民斎。

そして、その案内状の裏に、クリップで留められた枚の「」が同封されていた。

『確認事項』 、妻・川由紀は、夫・直が、極度の抑鬱状態および神耗にあり、突発な失踪および自に至った事実を承認する。 、倉庫災事故に関し、直がっていた切の発言は妄に類するものであり、会社側の管理責任を問わないことを確約する。 、追悼の会において、遺孀として記趣旨に沿った挨拶をい、親族および関係者に対する無用な混乱を収束させること。 ※記に違反し、故の名誉を毀損、あるいは会社の信用を失墜させる言があった、威力業務妨害および名誉毀損として相応の損害賠償を請求する。

きたを、類ので完全に「狂」として殺し、葬りるための契約。

正彦と義母は、警察のが伸びるに、親族や取引先、マスコミ関係者を集めてこの「追悼の会」をき、直のを既成事実化する気だった。

広告

すべてを「がおかしくなった弟の単独暴」として片付け、会社と自分たちのを守る防波堤を完成させるために。 そして、そのをすべて、妻である私に被せるために。

私はを指先で弾いた。 乾いたの音が、ホテルの静かな部に響く。

スマートフォンの画面を見る。 咲良さんから、「警察がきしました。の朝には捜査員が配置されます」とメッセージが入っていた。

私は鏡のにった。 目のには隈ができていたが、瞳の奥は澄み渡るようにたかった。

喪に袖を通す。 黒いが、私の体をく包み込む。

これは、夫を悼むためのではない。 、私を縛り続けてきた巨な嘘を、こので完全に埋葬するための戦闘だった。

、午。 んだはずの男の遺が飾られた祭壇ので、すべてを終わらせる。

菊のりが、噎せ返るほど腔の奥にまとわりついていた。

杉並区の裏にある瀟洒な民斎。 会議ほどのホールの央には、黒いリボンをかけられた直の巨な遺が掲げられていた。 の社員旅で撮られた、穏やかに微笑む夫の顔。

その祭壇のに、棺はなかった。 あるのは、直の遺品だという革靴と、義母が用した趣のゴルフバッグだけ。 「遺骨は、本の墓に納骨するまで母親の元で供養する」

という名目で、骨壺すら置かれていなかった。

当然だ。 に入れるべき遺骨も、燃やすべき体も、この世のどこにもしないのだから。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: