"夫の死を告げられた夜、届いた私の熟睡写真" 第12話
画面の向こうで、正彦が眉をひそめた。 『……おいおい。お、災の夜は夜まで現にいただろ。もしからバレたら、偽証教唆どころか、あの女まで犯隠避の共犯でパクられるぞ。連れ添った嫁を、代わりに差しす気か?』
直は、く笑った。 、私が度も見たことのない、底れない酷さを湛えた笑いだった。
『女なんてな、し脅して泣きつかれりゃ、夫のためなら何でもくんだよ。も飼い慣らしてきたんだ。俺の言う通りにくに決まってる』
息が止まった。
喉の奥が引き攣り、胃が雑巾のように絞られる。 の奥で、カチカチと計の秒針のような音が鳴り響いていた。
飼い慣らしてきた? 私が?
脳裏に、半の記憶が鮮烈に蘇った。 災事故の直、憔悴しきった顔で帰宅した直が、私に差ししてきた枚の類。 『会社の労務管理で、族の確認が必なんだ。あの夜、俺がちゃんとにいたってサインしてくれないか』
当の私は、類の文言に引っかかりを覚えた。 「午以、夫は切しなかった」と、自然なほど細かく刻が指定されていたからだ。 「直さん、あの夜、あなた付が変わる頃に帰ってきたんじゃなかった?」 私がそう尋ねた瞬、直の表が凍りついた。 そして、そのから週、直は私に対して言もを利かなくなったのだ。
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事もをつけず、挨拶も無し、寝のドアを乱暴に閉める。 私が「ごめんなさい、私が勘違いしていたのかも」と謝るまで、徹底に無し続けた。
あれは、する妻への苛ちなどではなかった。 ただの調教だったのだ。 言うことを聞かせるための、酷な計算。
「……ひどい」 隣で画面を見ていた咲良さんが、顔を覆って震えていた。 「自分の妻を……代わりに刑務所へ送るつもりだったなんて……」
私は泣かなかった。 議なほど、涙の滴すら滲んでこなかった。 胸のにあったの温もりやが、完全にえ固まり、い鉱物のように尖っていくのをじていた。
その、私のスマートフォンが、テーブルので激しく振した。
非通設定の着信。
咲良さんと線をわせる。 私は呼吸をつし、通話ボタンを押してスピーカーホンにした。
「……由紀か?! 由紀なんだろ!」
直だった。 どこかの公衆話なのか、受話器の奥で雑音がひどく反響している。 声は完全に錯乱していた。
「にったのか?! 母さんから聞いたぞ、警察を呼ぶって脅して追いしたって! お、体何をやっているんだ! 頼むから余計なことをするな!」
「……直さん、どこにいるの」 私の声は、氷のようにたかった。
「そんなことはどうでもいい! それより、あの部にあったプラスチックのケースだ! 予備のSDカードが入っていたケース、おが持っていっただろう?! あれをどこにやったんだ!」
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「見たわよ」
話の向こうの息遣いが、ピタリと止まった。
「……は?」
「曜の夕方。あなたが正彦さんと寝で話していたこと。全部、録画されていたわ」
沈黙。 受話器の向こうから、ヒュウ、ヒュウと掠れた呼吸音だけが漏れ聞こえてくる。
「『飼い慣らしてきた』……それが、あなたの本音だったのね。私に嘘のサインをさせて、警察に突きそうとしていたのね」
「……ゆ、由紀、違うんだ! あれは兄貴を油断させるためのハッタリで――」
「昔の約束、覚えてるって言ったわね」 私は夫の弁解を容赦なく遮った。 「の樽で、で喫茶をく。私を犯罪の代わりに仕てげようとしていたと、樽で何を話すつもりだったの?」
受話器の向こうの空気が、急激に濁っていくのが分かった。 取り繕うような甘い声が消え失せ、代わりに、ドスの利いた剥きしの敵が受話器を満たした。
「……調子に乗るなよ、由紀」
男の声だった。 私のっている「優しい夫」の皮が、完全に剥ぎ取られた瞬だった。
「おみたいな世らずの事務員が、誰のでこれまで自由なく暮らしてこれたとってんだ? 俺が毎をげて、すすって稼いできたで養われていたんだろうが! ちょっと名を貸すくらいでガタガタ抜かすな!」
「……」
「そのカードを渡せ。今すぐだ。渡さないなら、おが災の隠蔽に関わっていたって警察に証言してやるからな! おが俺に指示をしたんだって、兄貴と緒に供述を作ってやる! おを連れにしてやるぞ!」