"夫の死を告げられた夜、届いた私の熟睡写真" 第9話
目のにいるこの男は、誰なのだろう。 、同じベッドで眠り、朝を共にし、邪を引けば病しってきたこの男の、何パーセントが本物だったのだろう。
「……直さん」 私は静かに裾を引き抜いた。 「災でくなった女性、本さんって言ったわね」
直は怪訝そうに顔をげた。
「……そのがどうしたんだよ」
「そののの名、覚えてる?」
直の目が泳いだ。 唇がさく震えるが、名はてこない。
「……何歳だった? どんな顔をしてた?」
「そんなこと、今関係ないだろう!」 直は苛ちをわにして叫んだ。 「俺たちのがかかってるんだぞ! んだやつの名なんかどうでもいい! き残るのが先だろうが!」
その瞬、私ので、かけて積みげられてきた何かが、音をてて々に砕け散った。
「……失礼します」
私は踵を返した。
「おい、由紀! 待て! 由紀!」
背から追ってくる音があったが、の角を曲がったところで、通りからパトカーのサイレンの音がづいてくるのが聞こえた。 直の音がピタリと止まり、慌てて逆方向へ逃げていく気配がした。
私は度も振り返らず、駅に向かって歩いた。 が震えていた。呼吸が浅く、胸が締め付けられるように痛かった。 りなのか、しみなのか、それとも自分自の愚かさへの絶望なのか、の輪郭すら判別できなかった。
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駅のロータリーまで戻ってきただった。
「あの……川さん、ですよね?」
背から、控えめだが芯のある声で呼び止められた。
ち止まり、振り返る。 そこにっていたのは、な黒いトレンチコートを着た、代半とおぼしき女性だった。 化粧気のない顔ち、泣き腫らしたように赤くなった目元。 には、古びた茶封筒が握られていた。
「……どなたですか?」
女性はく礼し、震える声で名乗った。
「突然申し訳ありません。……本咲良と申します。の倉庫災でくなった、本由梨の妹です」
臓が、ドクンと嫌なね方をした。
「……本さんの」
「ずっと、川直さんを探していました。会社にっても『退職した』と払いされ、ご自宅に話しても取り次いでもらえず……。今、あなたのご自宅ので見張っていたんです。そうしたら、あなたが怯えた様子でびしてこられたので、失礼を承でを追わせていただきました」
咲良さんは茶封筒から、何枚ものA4用を取りした。 スマートフォンの画面を印刷した、メッセージのスクリーンショットの束だった。
「これを見てください。姉がくなるの夜、私に送ってきたメッセージです」
差しされたに目を落とす。
『咲良、会社の倉庫、本当におかしい。認のない劇物が量に運び込まれてる。
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責任者の川直さんに「消防法違反じゃないですか、私は点検簿にサインできません」って言ったら、「余計なことを言うとクビにするぞ。社の指示だ」って鳴られた』 『裏の非常ドア、から京錠かけられてる。逃げがない。怖い。今夜のシフトが終わったら、労基署に相談にく』
文字が、私の目に焼き付く。 優しい夫? 巻き込まれただけの被害者? 全部、真っ赤な嘘だった。 直はっていたのだ。違法な劇物が置かれていることも、非常が施錠されていることも。 そして、告発しようとしたこの女性を、職権で脅し、押し込めたのだ。
「警察は、単なる失として処理しようとしています」 咲良さんの目から、粒の涙が零れ落ちた。 「川直さんは、事故の翌から急に『体調良』で休職し、その方をくらましました。あのは、姉がぬと分かっていて閉じ込めたんです。川さん……奥さん。あなたの夫は、何を隠しているんですか? あのは今、どこにいるんですか?!」
くが、巻きに私たちを見ている。 世体。所迷惑。そんなものが、どうでもよくなっていく。
私は、咲良さんの震える肩を見つめた。 このは、半、たったでこの暗と戦ってきたのだ。 姉を理尽に殺され、企業の隠蔽作に押し潰され、それでも真実を求めて。
それに引き換え、私はどうだった? 夫の嘘に守られ、何もらず、のうのうとを過ごし、あげくの果てに夫の犯罪の「証拠隠滅の具」