"夫の死を告げられた夜、届いた私の熟睡写真" 第3話
息遣い配が、ドアの隙から伝わってくるような気がして、全の筋肉が張った。
やがて、押し殺した女のい囁き声が、板越しに微かに漏れ聞こえてきた。
「……起きてるんじゃないの?」
続いて、舌打ちの音。 男の声だった。
「チッ……勘のいいやつだな。旦引くぞ」
音が、静かに、擦りのようにしてリビングの方へとざかっていく。 やがて、玄関のドアが静かに閉まり、カギがかけ直される音がした。
私はそのにへたり込み、ドアに背を預けたまま、スマートフォンの画面を見た。 通話は、いつのにか切れていた。
指が痙攣するように震えていた。 逃げのない畳半の寝で、私はスマートフォンを握りしめ、迷うことなく110番を押した。
「はい、事件ですか、事故ですか」 「事件です……侵入者です」 声が裏返りそうになるのを、必で奥歯を噛み締めて抑え込んだ。 「京都練馬区……誰かが鍵を使って、私のに入ってきました。今、玄関からてきましたが、くにいるかもしれません。く来てください」
所と名を伝え、警察官が到着するまでの分。 私はドアのノブを背で押さえつけたまま、秒たりともくことができなかった。 暗の、を澄ませ続けた。 また鍵が回るんじゃないか。窓ガラスが割られるんじゃないか。
くからサイレンの音がづき、やがてマンションので止まった、ようやく肺の底に溜まっていた息を吐きすことができた。
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駆けつけたのは、所轄の警察署の域課の警察官だった。 オートロックを解錠して部に招き入れ、事を説する。 警察官は玄関の鍵、サッシのクレセント錠、ベランダの格子を懐灯で丹に調べた。
「ピッキングの痕跡はありませんね。サッシも無傷です。側から無理やりこじけた形跡は切ありません」 配の警察官が帳を閉じながら、怪訝そうな目を私に向けた。 「川さん、鍵をお持ちの方に当たりは?」
「……鍵は、つしかありません」 私はえ切ったを擦りわせながら答えた。 「私が持っているもの。夫が持っているもの。そして……義母に預けてある予備の鍵です」
「お義母様ですか」
「はい。それと……先ほど、んだはずの夫から話がありました」
警察官が顔を見わせた。 その表に、らかな警戒と「この女性は精神に混乱しているのではないか」という疑のが混ざるのが分かった。 当然だ。夫の事故を告げられたの夜に、夫から話があり、侵入者が来たと訴えているのだから。
私はスマートフォンを取りし、先ほどの着信履歴と、LINEのトーク画面を見せた。 午307分に撮された、私がベッドで眠っている写真。 そして午317分の通話履歴。
「これを見てください。夫のアカウントから、私が寝ている写真が送られてきたんです。
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撮は、侵入者が来る分です。でも、私はずっとでにいました。誰も部には入っていなかったはずなんです」
若い方の警察官が写真を受け取り、眉をひそめた。 「……これ、どこから撮られたものですかね」
「分かりません。でも、アングルが変なんです」
私は警察官を寝へ案内した。 灯りをつけた寝は、何の変哲もない、いつもの見慣れた部だった。 だが、写真と見比べると、はっきりとした違があった。
写真の画角は、がってスマホを構えて撮ったようなさではない。 ベッドの側、サイドテーブルの真横あたりから、し斜めを見げるような、固定された点。 枕元のマグカップと、私の横顔が、完全に同じ構図で収まる所。
私はサイドテーブルの周辺を凝した。 目覚まし計、文庫本、ティッシュケース。 そして――コンセントに差し込まれた、黒い直方体の急速充器。
面にデジタル計が表示されるタイプの、型の充ステーションだ。
半。 直が突然、「会社の取引先からく譲ってもらったから」と言って持ち帰り、私の枕元に設置してくれたものだった。 『由紀、スマホの充遅いって言ってただろ? これ、最型で急速充できるし、計も見やすいから使ってよ』
あのの夫の笑顔が、脳裏をよぎる。 優しい夫。妻の些細な満を覚えていてくれる、気配りの。