"孤島に捨てられた母✕式場の主賓席に座る亡夫" 第15話
「本……貴様……!」
「違います、会! そんな昔の類など、私は——」
「黙れッ!」
正臣の声が、密を震わせた。 ガラス窓がびりびりと共鳴するほどの気迫だった。 修の体がビクッとねがり、言葉を失ってをパクパクとかす。
「……点がいったよ」
正臣はちがり、机に両をついて修を睨み据えた。 その瞳には、裏切られた者への容赦ない処刑宣告が宿っていた。
「、が社ので起きた事故の調査が、なぜか途でち消えになった。点検簿が紛失し、請けの社がへびりてんだからだ。私はずっと疑っていた。あの男はんだのではなく、どこかへ隠れしたのではないかと。……まさか、が社の懐に顧問として潜り込み、過の証拠を隠滅するために私の息子まで利用していたとはな」
「会、お待ちください! 誤解です! 私は御社のために——」
「法務部と顧問弁護士を呼べ」
正臣は背に控えていた秘に、氷のようにたい声で命じた。
「今すぐ、本修との顧問契約を解除する。過の業務履歴、社内データの全ログを保全し、警察への刑事告訴状を作成させろ。業務横領、詐欺、そしての事故に関する証拠隠滅の疑いだ。効が成しているかどうかは、検察と裁判所に判断させればいい」
「会! 会ッ!」
修がに膝をつき、すがるようにを伸ばした。
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だが、正臣はそのを汚物でも払うように叩き落とした。
、のを踏み躙り、妻を捨て、娘を利用して築きげた男の砂のが、音をてて崩れった瞬だった。
だが、私の胸に来したのは、勝利の歓などではなかった。 ただ、どこまでもたく澄んだ虚無だけだった。
私はゆっくりと、部の隅のソファに線を向けた。
美穂が、顔を覆った指の隙から、その景を呆然と見つめていた。 ドレスのレースは破れ、ティアラはに落ち、化粧の崩れた顔は化師のように醜く歪んでいた。
郎の拓也が、ゆっくりと美穂のに歩み寄った。
「拓也さん……」
美穂がすがるように顔をげた。
「違うの、私、らなかったの! お父さんがそんな恐ろしいことをしていたなんて……私、ただ、拓也さんと幸せになりたくて……!」
拓也は、胸元に挿していた純のブートニア——郎のを、ゆっくりと引き抜いた。 そして、それを美穂の元へ、静かに落とした。
「……君の父親が何をしたかは、僕には関係ない」
青の声には、りすら含まれていなかった。 あるのは、底れない絶望と、完全な拒絶だけだった。
「僕が耐えられないのは、君だよ、美穂」
「え……?」
「君は、自分の結婚式のために、育ててくれた実の母親を『んだ』と僕に嘘をついた。そして、その嘘を守るために、昨、あんな島に母親をで置きりにした」
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美穂の呼吸が止まった。
「そんなと、これからのを共に歩めるとうかい? 自分の母親を平気で捨てるようなを、僕がせるとうかい?」
「拓也さん! お願い、捨てないで! 私、どうすればいいの!? どこへけばいいのよ!?」
美穂がをい、拓也の元にすがりつこうとした。 だが、拓也は言も発することなく踵を返し、度も振り返らずに部をてった。
バタン、といドアが閉まる音。 それが、娘が見た贅沢で華やかなの、永の幕引きの音だった。
「うわああああっ!」
美穂が髪を振り乱し、絨毯ので絶叫した。 修は壁にもたれかかり、目を剥いてへたり込んでいる。
誰も、もう誰も助けてはくれない。 嘘と保で結ばれたの共犯関係は、自らが撒いた毒によって、自らを焼き尽くしたのだ。
私はちがった。 コートの襟を正し、バッグを肩にかけた。
佐伯正臣に向かって、静かに礼する。
「お騒がせいたしました」
正臣はくをげた。
「……奥さん。息子が、そしてが社が、貴女に変な非礼を働いた。からお詫び申しげる」
「いいえ。私は、自分の尊厳を取り戻しに来ただけですから」
私は背を向け、応接の扉にをかけた。
「お母さん!」
背から、鳴のような声が追いかけてきた。 振り返ると、美穂が素で、破れたドレスを引きずりながら駆け寄ってくるところだった。
その首には、私がの入学祝いに買ってやった、物の革の腕計がっていた。