"孤島に捨てられた母✕式場の主賓席に座る亡夫" 第12話
「誰なの? 私はにんだことになっていて、目のであなたの肩を掴んでいる男は、佐伯グループの顧問だそうね。じゃあ、あなたを、女つで育ててきた私は誰で、あそこにっている男は誰なの?」
「言わないで……お願いだから、ここではやめてよ……!」
美穂が両で顔を覆い、砂のに崩れ落ちた。 美しく結いげられた夜会巻きが崩れ、純のベールが絨毯のに無残に広がった。
「美穂!」
修が鳴った。 もはや父親の顔でも、企業の顧問の顔でもなかった。 己の保のためだけにき延びてきた、卑しい逃者の顔だった。
「くだらん妄に付きうな! くて! 式を続けるんだ!」
男が美穂の腕を無理やり引っ張りげようとした。
「をしなさい!」
私の鋭いが、会の空気を切り裂いた。
修がビクッとを止めた。 、ので度も逆らったことのなかった従順な妻の、聞いたこともない声。 その気迫に気圧され、男のが歩退した。
私はしゃがみ込み、に泣き崩れる娘の顔を覗き込んだ。
「美穂。あの男のために、もう度私を殺すの?」
娘の喉から、引き裂かれるような嗚咽が漏れた。
「……お父さんなの」
会が、完全に静止した。
美穂は両を絨毯につけたまま、額をに擦り付けるようにして泣き叫んだ。
「お父さんなの……! ごめんなさい、お母さん……! お父さんは、んでなかったの……!」
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「美穂、貴様ッ……!」
修のから、品性をかなぐり捨てた罵声がびした。 だが、その言葉はもう誰のにも届かなかった。
郎の拓也が、まるで汚らわしいものを見るかのように、美穂からきく歩、ずさった。
「お父さん……? 本顧問が……君の父親……? じゃあ、母親がんだというのも……全部、嘘だったのか……?」
「拓也さん、違うの、聞いて……! 最初は、本当にお父さんがきてるなんてらなかったの!」
美穂はをうようにして、拓也のタキシードの裾にすがりつこうとした。 だが、拓也はそのを無言で払い除けた。 青の顔には、裏切られた絶望と、激しい嫌悪のが張りついていた。
美穂のから、堰を切ったように真実が零れ落ちていく。
。 美穂が転職した佐伯運の系列企業で、偶然、あの男と再会したこと。 男は「本」という偽名を使い、佐伯正臣の懐にく入り込んでいたこと。
修は美穂を呼びし、泣き落としをかけた。 「当は会社の事故の責任をで背負わされ、殺される寸だった」 「族に累が及ばないよう、やむを得ず姿を消したのだ」 「いつかおたちを迎えにくつもりだった」
そう言って、美穂に級マンションの賃を援助し、流のを買い与え、父親としてのを偽装した。 そして、佐伯運の跡取りである拓也との交際を巧妙にお膳てした。
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「お父さんが言ったの……! 母親が現れたら、過の破産や事故の責任が蒸し返されて、私の結婚も破談になるって……! 式が終わって、籍を入れてしまえば、もう佐伯も戻りできないから、それまでお母さんのことは伏せておけって……!」
「だから、んだことにしたのね」
私の乾いた呟きに、美穂の言葉がピタリと止まった。
「お母さん……私、怖かったの……! 拓也さんをしていたの! お母さんに苦労させられた過を話したら、釣りわないって捨てられるのが怖くて……!」
していた。 怖かった。 すべてが、自分を守るための、のような言い訳だった。
だが、私の胸の奥に刺さったまま抜けない最もい棘は、そんな虚栄の告では解けなかった。
私は、壇で顔面蒼になってち尽くす修には、もう線すら向けなかった。 あんな男は、最初からそういうき物だ。 責任から逃げ、のを喰い物にしてき延びる寄虫だ。
問題は、目ので泣き崩れている、私が命懸けで守り育ててきた娘だった。
私は膝をつき、美穂の元に顔をづけた。 私の声はく、掠れ、周囲のざわめきにかき消されそうなほど静かだった。
「美穂。昨、夕方のあの島で……マフラーを取りにくと言って、背を向けたわね」
美穂の背が、目に見えて張った。
「港の窓のシャッターがりていて、もう度とがないことを……あんたはっていたわね?」
「……っ」
「灯台のベンチから港まで、歩いて分もかからない。