"孤島に捨てられた母✕式場の主賓席に座る亡夫" 第10話
「めでたい席だ。警察汰にするに、裏の控へ連れてきなさい。これ以、佐伯の名誉にを塗るような真似は許されん」
佐伯の名誉。 どのが、そんな言葉を吐くのか。
、請けの貨物で起こした災事故から逃げし、若い員の命を踏み躙り、族に数千万円の負債を押し付けてへ消えた男が。 今や横滨の名の威を笠に着て、私を「名誉を汚す部者」として排除しようとしている。
会の端から、黒を着たホテルの警備責任者らしき柄な男たちが、で私を取り囲もうといを詰めてくるのが見えた。 円卓のあちこちから、佐伯の親族や財界の鎮たちの、ひそやかな囁き声が漏れ聞こえてくる。
「何者だ、あの女は……」 「婦のりいか? 随分とみすぼらしい格好をしているが」 「美穂さんのご親族は、おもおられないと聞いていたはずだがね」 「の病気の方じゃないのか。警備は何をモタモタしているんだ」
世体。 このにいる全員が、無識のうちにその見えない刃を私に向けていた。 華やかな社交のに迷い込んだ、汚れた異物。 刻もく排除し、元の優雅な常に戻らなければならないゴミクズ。
男の計算通りだった。 ここで私を「のおかしい侵入者」として処理しさえすれば、すべてはに葬られる。
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私がどれだけ叫ぼうと、警察を呼ばれ、精神科の待に放り込まれて終わるだけだ。
「待ってください!」
その張り詰めた空気を切り裂くように、砂から男が駆けりてきた。 郎の佐伯拓也だった。
仕ての良いいタキシードを着た青は、育ちの良さが滲みる端正な顔を歪め、困惑と焦燥の入り混じった目で私を見つめていた。
「あの……あなた様は、どなたですか? 何かの違いでしょうか」
拓也の声には、相をから拒絶しない誠実さがあった。 その優しさが、かえって私の胸の奥を鋭く抉った。
この青は、何もらされていないのだ。 悪と保で塗り固められた嘘の枠組みの側に置かれ、美穂が差しした『健気で幸な嫁』という虚像を、からし、信じ込まされていたのだ。
「佐伯拓也さんですね」
私は荒い息をえ、郎の目をまっすぐに見据えた。
「美穂から、私のことをどう聞いていますか」
拓也の眉が、ピクリとねがった。
「え……? 美穂のお母様は……に、い病気でくなられたと……美穂が学の頃から、ずっとおで苦労されて……」
言葉の途で、拓也の線が私の顔の輪郭を捉えた。 目元。筋。い唇。 美穂と血の繋がった私の顔ちに、何かしらの既を覚えたのだろう。 青の瞳に、急速に疑のが広がっていく。
「そんな……まさか……」
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私はゆっくりと、砂の席へ線を移した。
美穂は、純のドレスの裾を狂ったように握りしめたまま、子にへたり込んでいた。 顔面からは完全に血の気が引き、気に変している。 ののダイヤのティアラが、体の震えにわせて細かくカタカタと揺れていた。
演台のの男——藤原修が、マイクを握ったまま、段いステージから娘を見ろした。 その瞳の奥に宿っていたのは、父親のなどでは断じてなかった。
脅迫だった。 「余計な真似をするな」という、酷な命令。
「美穂さん」
修のく乾いた声が、スピーカーから流れた。
「君の縁の親戚かね? 以、母親のだと名乗って銭を求してきたという、あの物か?」
背筋が凍るほどの寒気がった。 銭を求する、のおかしい親戚。 男は瞬にそこまで物語を捏造し、娘にその筋きに乗るよう無言の圧力をかけているのだ。
ここで美穂が「はい」と頷きさえすれば、私は恐未遂の狂として警察に引き渡される。 、必で守り育ててきた娘のによって、度目の刑を宣告されるのだ。
警備員のが、私の肩に伸びてきた。
「お客様、のお客様のご迷惑になります。別でお話を——」
「触らないで」
私はく、しかし骨に響くような声で制した。 警備員のが、その迫力に押されて宙で止まる。
私は鳴りもしなかった。取り乱して泣き叫ぶこともしなかった。 そんなの爆発は、この男たちのう壺だ。