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"孤島に捨てられた母✕式場の主賓席に座る亡夫" 第8話

成式の振袖を仕てるために、朝からの清掃に通ったのは誰だ。

私のを丸ごと盗み取り、自分の『健気ないち』という美しいアクセサリーに仕て直して、名のをくぐったのか。

のの席次表が、ぐしゃりと音をてて握り潰された。 爪がのひらにい込み、痛みが神経を刺した。 だが、その痛みのおかげで、の芯が恐ろしいほどえ切っていくのがわかった。

チャイムが鳴り響いた。 宴を告げる、で厳かなパイプオルガンの音。

ホワイエにいた参列者たちが、次々と会のへと吸い込まれていく。 やがて、真鍮の取っがついた巨な防音扉が々しい音をてて閉ざされた。

静まり返ったホワイエ。 残されたのは、インカムをつけたホテルの男性スタッフがだけだった。

私は呼吸をひとつした。 肺のに、ホテルのたく乾燥した空気を満たす。

コートを丸めて腕に抱え、をろした。 背筋を真っ直ぐに伸ばし、理のを踏みしめて、扉のへと歩みた。

スタッフの線が、瞬に私を捉えた。 みすぼらしいワンピース。 疲弊しきった顔。 招待客の優雅さとは完全にかけれた異様な気配。

の表が、あからさまな警戒のに染まる。

「恐れ入ります、お客様。披宴はすでに始まっておりますが……」

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柄な若いスタッフが、くを遮るようににた。 丁寧だが、相を排除することを提とした、ホテル特の徹な声。

「どちら様でしょうか。ご親族の控はすでに閉鎖されておりますが」

「婦の親族です」

私の声は、自分でも驚くほどく、はっきりと響いた。

配のスタッフが怪訝そうに眉を寄せ、元の名簿をめくった。

「婦側の……? お名を頂戴できますでしょうか」

「藤原子」

その名をにした瞬、配の男の指がピタリと止まった。 線が名簿の点に落ち、それから弾かれたように私の顔へとねがった。

男の喉が、わずかにした。

「……藤原、子様……? しかし、婦のお母様は……に……」

「んでいません」

スタッフが息を呑み、言葉を失った。その瞬の隙を見逃さず、私は男の肩をすり抜け、扉の真鍮の取っにをかけた。

「あ、お待ちください! 困ります!」

背から伸ばされたををよじって振り払い、全体をかけて扉を押しけた。

ズシリとい扉が、ゆっくりと内側へと滑り込んだ。

眩いが、界を焼き尽くすように溢れした。

巨なクリスタルシャンデリアの煌めき。 百数の招待客が埋め尽くす円卓。 百と純の薔薇で埋め尽くされた会の空気。

優雅なBGMが流れ、会全体が温かな拍の余韻に包まれていた。

正面の砂。

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段くなったステージの央に、純のドレスにを包んだ美穂が座っていた。 胸元にレースをあしらった最級のシルクドレス。 にはダイヤのティアラ。 その隣で、郎の拓也が誇らしげに微笑んでいる。

だが、私の線は、砂の娘には向かわなかった。

会の正面。 スポットライトをに浴びて演台にっている、の男。

マイクを握り、郎側の主賓として祝辞を述べている物。

司会者の澄んだアナウンスが、性能のスピーカーを通して、井のい会に朗々と響き渡っていた。

「……続きまして、郎側主賓、ならびに株式会社佐伯運・特別顧問、本修様より、温かいご祝辞を頂戴いたします」

本修。

臓が、ドクンと嫌な音をててねがった。

仕ての良い、濃紺のオーダーメイドのつ揃えスーツ。 きれいに撫でつけられた髪混じりの髪。 縁の鏡の奥にある、神経質そうに細められた目元。

よりも、頬の肉がつき、肥えている。 につけているものすべてが、何自由ない流階級の活を物語っていた。

けれど。

マイクを握るの指を、わずかにてる独特の癖。 言葉を切る瞬に、顎をしだけ引いて聴衆を見渡す、あの傲な仕。

忘れるはずがない。

、暗い駿湾の底でたくなっていると信じ込み、毎の命にはで仏壇に線をげ、泣きながらをわせ続けてきた男。

私の夫。 藤原修だった。

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