みかん小説
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"孤島に捨てられた母✕式場の主賓席に座る亡夫" 第7話

その誰もが、私という異物を界の端で捉えては、無言で距を取っていく。

化粧の鏡のにち、のたいで顔を洗った。 乱れた髪をきつく結び直し、コートを脱いだ。 に着ていたのは、娘の結婚式のために半にデパートのセールで買った、濃紺のシンプルなワンピースだった。 本当は、このホテルの着付けに、ヶから予約していた黒留袖が届いているはずだった。 私が汗垂らして貯めたパート代から、万円を叩いて仕て直した、加賀友禅の留袖。

だが、着付けになどけるはずがない。 美穂の配によって、私のち入りは最初から防がれているに決まっている。

私はワンピースのシワをでく伸ばし、背筋を真っ直ぐに伸ばした。 バッグの底から、古びたプラスチックケースを取りす。 には、に駿湾のに残されていた夫の免許証のコピーと、擦り切れた族写真。 それだけを胸のポケットにねじ込み、エスカレーターへ向かった。

階の宴会フロアへがると、空気が変した。 吹き抜けのホワイエには、華やかな芳と、抑制された笑い声が満ちていた。 い井からはシャンデリアの眩いがり注ぎ、の絨毯のを、黒のモーニングや留袖を着た参列者たちが優雅にき交っている。

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案内板が、理の壁のにっていた。

『佐伯・藤原 結婚披宴 鳳凰の』

受付のには、だかりができていた。 私は太い理の円柱のにを潜め、息を殺してその様子を伺った。

受付の脇には、豪奢なで飾られたウェルカムボードが置かれている。 純のウェディングドレスを着て、恥ずかしそうに微笑む美穂。 その隣で、穏やかな顔をして美穂の肩を抱く、仕ての良いタキシードの郎——佐伯拓也。

写真のの娘は、世界で番幸せそうな顔をしていた。 母親をに捨てた翌に、この笑顔を作れるのか。 それとも、あの島での来事など、すでに過のなゴミとして処理し終えたのか。

胸の奥が、たい刃物でえぐられるように痛んだ。

受付の卓に、箔が施された席次表が何枚も積まれているのが見えた。 参列者が、またとそれを受け取り、いては談笑している。

列が途切れた瞬の隙を見計らい、私は音を忍ばせて受付の端へづいた。 係の女性が芳名帳の理に追われているに、卓の端に置かれていた予備の席次表を、震える指先で引き寄せた。

ページをく。 指先が微かに震え、質ながカサリと音をてた。

郎側。 には、堂々たる肩が並んでいる。 『佐伯運株式会社 代表取締役会 佐伯正臣』 『同 代表取締役社 佐伯佳代』

そして、婦側。

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親族席の最列。

私の線が、吸い寄せられるようにそのに落ちた。

そこには、私の名はなかった。 『母』という文字すら、していなかった。

ただ、さな、さなしめやかなフォントで、こう印刷されていた。

『婦母 故・藤原子』

全の毛穴がき、の奥でキーンという甲い鳴りが鳴り響いた。

本当に、殺されていた。

噂話でも、約束でもなく。 佐伯の親族や、横滨の運業界の鎮たちがにするこの正式な席次表ので。 私はにんだれな母親として、活字になって処理されていた。

「美穂さん、本当によく頑張られたわよねえ」

すぐろから、留袖を着た配の女性の囁き声がにび込んできた。 臓がねがり、私は席次表を握りしめたまま、柱のへ体を引いた。

「ええ。お母様をお若い頃に病気でくされて、お父様も難事故で方でしょう? 寄りもないで、おで健気にをて就職されたって」 「拓也さんのお母様も、その健気さに打たれたそうよ。『苦労をっている娘さんだから、うちの息子を支えてくれる』って」 「本当に派なお嬢さんだわ。親御さんがきておられたら、どんなにばれたかしらねえ」

健気。 苦労。 寄りがない。

……は?

唇の端が、引きつるように持ちがった。 笑い声が喉元までせりがってきて、それを必に噛み殺す。

学費を払ったのは誰だ。 をした夜に、晩を握っていたのは誰だ。

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