"孤島に捨てられた母✕式場の主賓席に座る亡夫" 第6話
みすぼらしい格好でったって、払いにされるのが落ちさ」
「ええ、わかっています」
みすぼらしい。 その通りだった。
に晒されて潮の匂いがこびりついたコート。 寝で赤く充血した目と、乾ききった唇。 、スーパーのレジ打ちとの清掃でひび割れた私の。
けれど、私は逃げない。 逃げてしまえば、私はあのの筋き通り、「にれずんだ惨めな母親」として、この世から消されるのだ。
「お世話になりました」
私は宿泊代の千円札を揃えて帳に置き、く礼して民宿をた。
港へと続く坂をる。 朝のたい潮が、容赦なく正面から吹き付けてきた。 く側の平線から、ゆっくりとオレンジのが滲みしている。
午分。 鈍いディーゼル音を響かせながら、始発のフェリーが岸壁に接岸した。
切符売りのガラス窓に、昨夜私が叩いたの跡がうっすらと残っていた。 窓の駅員に定期券のような片切符を差しし、タラップを渡る。
が波を蹴ててきした。 甲板のすりに掴まり、ざかっていく初島の灯台を見つめる。
昨、美穂が私を置きりにした所。 「マフラーを取ってくる」と言って、背を向けてりった娘のろ姿。 あのとき、娘はすでにっていたのだ。 最終便のを。
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この島に母親を閉じ込めれば、翌の披宴に絶対ににわないということを。
携帯話の画面をく。 バッテリー残量は、わずかパーセント。 私は迷わず源を切った。 無駄な話をかけるつもりはなかった。 助けを求めるためではなく、真実を突きつけるために、最の池を残しておかなければならない。
港に着いたのは、分を回った頃だった。
タクシー乗りには目もくれず、急な坂を駆けがって駅へと向かう。 首が軋むように痛んだが、ち止まることはできなかった。
線のホームには、休の楽に向かう々が溢れていた。 とりどりのアウトドアウェアを着た族連れや、談笑する若いカップル。 その輪のに、潮でボサボサに固まった髪と、埃のついた靴を履いた過ぎの女が、霊のように紛れ込んでいた。
周囲の線が、折チクチクと私の姿を撫でていく。 審者を見るような、居の悪い目。
——世体。
これまで以、私を縛りつけてきた呪縛だった。 夫が失踪したときも、所の噂話に怯えて戸を閉め切って暮らした。 「事故を起こした会社の女」とろ指を指されるのが怖くて、スーパーのパートでも常にをげてきてきた。 娘が肩の狭いいをしないよう、学の事には誰よりもなで席し、保護者たちの輪の端っこで息を殺していた。
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その世体を守るために、娘は私を殺したのだ。
『佐伯の基準に、私はわなかったのよ!』 昨夜の美穂の叫びが、の底で鋭く反響する。 『母親がでパートを掛け持ちして……そんな庭の娘、向こうのお父様が許してくれるわけないじゃない!』
だから、んだことにした。 母親のそのものを、帳簿から赤線で消すように、社会に抹殺した。
の窓に映る自分の顔を見つめた。 目のには濃い隈が落ち、頬は痩せこけている。 けれど、瞳の奥だけが、見たこともないほどたく澄んでいた。
午分。 は横浜駅に滑り込んだ。
私はみなとみらい線に乗り換え、みなとみらい駅でりた。 改札をると、潮のりと、しく磨きげられた都特の無質な空気が迎えてくれた。
ち並ぶ巨なガラス張りの層ビル。 に揺れるパームツリー。 休の広には、芸を取り囲む族連れの歓声が響いている。
その沿いにそびえつ、ヨットの帆を模した亜のつホテル。 今の披宴の会だった。
自ドアをくぐり抜けた瞬、甘い柑橘系とホワイトティーの品なりが腔をくすぐった。 柔らかなの。 どこまでも続く最級のウール絨毯。 音が吸い込まれるように消えていく。
ロビーをき交う々は、みな洗練されたなりをしていた。
ダークスーツを着こなしたビジネスマンや、パールのネックレスを揺らす着物姿の婦たち。