"狂人にされた私と、義母の同じ受診票" 第15話
こののために、週からしずつ準備しておいた着替えと、実印、通帳、分証。 そして、あの青いクリアファイル。
夫がいた『受診状況説』の原本と、弁護士への相談票の控え。 すべてをサブバッグに詰め込み、ファスナーを閉めた。
リビングに戻ると、夫はに両膝をついていた。 私の兄と彦が、まるで犯罪者を取り囲むようにったまま見ろしている。 義母は子に座ったまま、たい目で息子の頂部を見つめていた。
「真由……どこへくんだ」
夫がうようにして私にを伸ばしてきた。 あの爽やかで、当たりのいい課の面はどこにもない。 ただ、世体と保を失うことに怯えきった、れな男の残骸だった。
「頼むから、てかないでくれ。話しおう。な? 俺が悪かった。おは……おはなんとかして面するから。会社にもバレたら、俺のが終わってしまうんだよ……!」
私は夫のがスーツケースに触れる直で、たく線を落とした。
「話なら、これからは弁護士を通してください」
「弁護士って……真由!」
「、ありがとうございました」
切のを排して、それだけを告げた。
鸣り声も、涙も、罵倒もなかった。 ただ、目のにいる男が、私のから完全に切りされた異物のように見えていた。
玄関へ向かう私の背で、義母が静かにちがる気配がした。
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「彦」
義母の凛とした声が響いた。
「この男の相は、あんたがしなさい。私は真由さんと緒にるよ」
「……母さん」
「私はね、から今まで、自分が狂ったんじゃないかって怯えながらきてきたんだ。そのを、この男にきっちり清算してもらう。彦、あんたも伝いなさい。私を疑った責任があるんだからね」
彦はくを垂れ、ただ「……分かった」とだけ答えた。
へると、のたいが頬を撫でた。 空はどこまでもく、澄み切っていた。 、息を潜めて暮らしてきたあのの玄関ドアが、背でく閉まる。
肺の底まで、鮮な空気が満ちていくのをじた。
*
翌朝から、現実は容赦のない速度でき始めた。
私は会社の休を使い、友の奈緒が配してくれたマンスリーマンションに荷物を運び込んだ。 オートロックのついた、狭いが清潔なワンルーム。 誰にも引きしを荒らされる配のない、自分だけの空だった。
そので、紹介された弁護士事務所のを叩いた。
担当してくれたのは、事事件と消費者被害を専に扱う、代の女性弁護士だった。 机のに、私が持ちした類のすべてを並べた。
・夫が作成した、妻と母親に対する通の受診状況説。 ・庭内財務管理権限委任契約(夫の実印捺印済み)。 ・夫のブリーフケースにあった、婚および財産隠蔽の相談票控え。
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・アセットマネジメントの登記事項証。 ・共座から百万円が引きされた通帳の原本。 ・義母の座から百万円が振り込まれた伝票の控え。
弁護士は鏡を押しげ、枚枚をルーペで確認するように精査した。 やがて顔をげ、い溜息を吐いた。
「……極めて悪質ですね」
その言に、私の張っていた肩の力がふっと抜けた。
「これは単なる夫婦の性格の致や、銭覚の相違ではありません。配偶者の精神瑕疵を図に捏造し、財産管理権を当に剥奪しようとしたなハラスメントであり、信義則違反です。母親に対する為についても、準詐欺罪や印私文偽造・同使の疑いが極めて濃です」
「法に、どうけばいいでしょうか」
「まず、庭裁判所へ婚姻費用の分担請求と、婚調の申てをいます。同に、共財産であるご自宅の産について、夫が勝に売却や担保設定をえないよう、処分禁止の仮処分を申請しましょう」
弁護士は際よく類をまとめながら、淡々と続けた。
「そしてアセットマネジメントですが……実は、先週末に警察の経済事犯係がきしています。代表の林という物は、資法違反の疑いで任の事聴取を受けている段階です。破産続きに入るに、夫名義の持ち分や返還請求権を保全する必があります」