"狂人にされた私と、義母の同じ受診票" 第11話
夫の、底申し訳なさそうな、それでいて包容力に満ちた声。 廊を歩いてリビングへ入ってきたのは、の男たちだった。
先を切る夫は、等なネイビーのカーディガンを羽織り、どこまでも謙虚な顔を貼り付けている。 そのろに、私の実兄。務の作業着から着替えたばかりの、着慣れないスーツ姿で、居悪そうに肩をすぼめている。 そして最尾に、京でシステムエンジニアをしている夫の実兄、野彦。鏡の奥の目を神経質に細め、疲れた表を隠そうともしていなかった。
リビングの空気が、瞬でく淀んだ。
「おや、母さん。もう来てたのか」
彦が義母の姿を認めて眉をひそめた。
「母さんまで呼んだのか、隆司。齢なんだから、無理させないほうがいいって言っただろ」
「ごめんよ、兄さん。でも、真由が最、母さんのことも疑うようなぶりをするんだ。族全員が揃っているで、誤解を全部解いておきたくてね」
夫は際よく客用の湯呑みを用し、デパートの袋から取りした羊羹を皿に取り分けた。 完璧なホストの振るい。 誰がどう見ても、「緒定な妻を気遣い、親族にをげる誠実な夫」の姿そのものだった。
兄が私を睨みつけた。 その線には、らかな苛ちと失望が貼り付いていた。
「真由。お、顔が悪いぞ。
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ちゃんと寝てないんじゃないのか?」
「……お兄ちゃん」
「隆司さんから全部聞いたぞ。の貯が消えたって騒ぎてて、通帳を隠したり、病院の予約を当になってドタキャンしたりしたそうだな。お、昔からい込みが激しいところがあったが、いい歳して何やってんだ。旦にここまで配かけて恥ずかしくないのか」
兄の言葉の端々に、夫が事に吹き込んだ毒がまざまざと見て取れた。 夫は湯呑みを兄のに置きながら、申し訳なさそうにを振った。
「お義兄さん、真由を責めないでやってください。真由が悪いんじゃないんです。仕事のストレスやホルモンバランスの乱れで、が被害妄の形をとって現れてしまう病気があるらしいんです。俺がもっとく気づいてやれればよかったんですが……」
夫はくをげた。 その見事な演技に、彦も同を隠せない様子でため息をついた。
「隆司、おも変だな。……真由さん、弟をあまり困らせないでやってくれ。隆司は会社でも管理職になって、番プレッシャーのかかる期なんだ。のことくらい、して任せられるようにしてやらないと」
の兄が、夫の方として完璧に陣形を組んでいた。
私の喉の奥が、からからに渇く。 彼らは悪ではない。 ただ、夫がかけて積みげてきた「誠実で優秀な男」
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という虚像と、族を配する善を、そっくりそのまま利用されているだけだ。 そしてその善こそが、私を窒息させる最も分い壁だった。
夫はダイニングテーブルの誕席に腰をろすと、持参したビジネスバッグから枚の類を取りした。
「皆、忙しい集まってくれてありがとう。今集まってもらったのは、真由を責めるためじゃない。これからのがの方針を、親族のので決めたいからなんだ」
夫は最初の枚をテーブルの央に滑らせた。 そこには、あの見慣れたタイトルが躍っていた。
『受診に伝える活状況について』
「これは、来週の曜に真由を連れていく病院の先に、事に渡す活記録のメモだ。真由がどんな状態にあるか、俺が客観にまとめたものだよ」
兄がそのをに取り、眉根を寄せて読みめる。
「……緒定、被害妄、銭への異常な執着……おい、真由、ここまで酷いのか?」
「酷いんじゃないんです、お義兄さん。病気の症状なんです」
夫はすかさずを挟み、痛ましげに目を伏せた。 そして、枚目の類を、私の目のにすっと差しした。
『庭内財務管理権限委任契約』
すでに夫の署名と実印が押された、あの類だった。
「真由。おが今、番をじているのはおのことだ。通帳を見るたびに、誰かに盗まれるんじゃないかって恐怖に襲われるんだろ? だから、おのが落ち着くまで、庭のすべての融資産の管理を俺に任せてほしい。