"五万円で捨てられた娘" 第5話
「言えます。法には、遺産分割協議がわない限り、実はお母様の相続であるあなたと直さんの『法定相続分各分の』の共状態のままです。あなたが印鑑を押さなければ直さんは売却できませんが、逆に言えば、直さんがしなければ、あなたも実を単独で引き継ぐことはできません。協議が難航すれば、庭裁判所での遺産分割調、さらには審判へとむことになります」
目のが暗くなるのをじた。 兄を完全に黙らせる魔法の杖など、どこにもしなかった。 法は、酷なまでに続きの平等を求める。 たとえ兄がどれほど卑劣な嘘をついていたとしても、実子である以、法な権利の俵から完全に叩きすことはできないのだ。
「そんな……調なんて、何ヶも、何もかかるんですよね? 私はパートのだし、弁護士費用だって……」
「美咲さん、落ち着いて聞いてください」
森田弁護士はを乗りし、私の目をまっすぐに見据えた。 その声のトーンが、段くなった。
「問題は、です。あなたにがないのではありません。直さんに、がないのです」
「……どういうことですか?」
森田弁護士はデスクの引きしから、枚のメモ用を取りした。
「実は昨、都内にある産仲介業者の担当者から、当事務所に本の話が入りました。
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お母様が、登記の相談を当職にされていた関係で、私の名が登記記録の照会窓に残っていたからです」
弁護士の目が、鋭利な刃物のようにった。
「その業者は、こう言っていました。『直氏から、実の売却に関する専任媒介契約の締結を提として、相続登記がいつ完するかの確認があった。来週々には買い候補との現内覧が設定されているが、類の準備はっているか』と」
喉が鳴った。 兄の、今朝の話の言葉がので霊する。
――来週の曜には、産が買いを連れて内覧に来るんだ。く更にするか売却の契約を結ばなきゃならねえんだよ。
「直さんは、あなたから実印を取りげるから、すでに実を売り払う約束を部と交わしています」
森田弁護士はややかに言い放った。
「産の売買において、相続登記が未のまま勝に契約をめること自体、極めて異例で危険な為です。そこまでして急ぐ理由はただつ。直さんの会社は今、再び致命な資難に陥っています。おそらく、今末に決済しなければならない形か、の支払いが迫っているはずです。実を売り払って入る付か売却代がなければ、彼の会社は渡りをして倒産する」
パズルの最のピースが、音をててはまった。
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なぜ、母がんでわずかなのか。 なぜ、あんなにも乱暴に戸籍謄本を叩きつけ、万円の賃で私を追いそうとしたのか。 兄には、け容赦なく妹をいたぶる余裕など、最初からなかったのだ。 背にがついた獣のように、ただ破滅から逃れるために、番御しやすく、何もらないはずの私を狙い撃ちにしたのだ。
「直さんは追い詰められています」
森田弁護士は類を揃え、トントンと机のでえた。
「追い詰められたは、次に何をするか。美咲さん、あなたが今実印を押さないと分かれば、あの男は必ず、より引で、より卑劣な段にてきます。親族を巻き込み、あなたの『養子』というを世に晒し、世体と同調圧力であなたを窒息させようとするでしょう」
背筋に、氷を滑り込ませられたような悪寒がった。
「……親族会議」
わず呟いていた。 兄がよく使うだった。 自分が利になると、必ず母の兄弟やうるさい叔父たちを呼び集め、「男の顔をてろ」と声で空気を支配する。 あの親戚たちので、私が養子だと晒されたら。 「育ててもらった恩も忘れて、実の息子からを奪うのか」となじられたら。 私のは、本当に耐えられるだろうか。
震える私ののに、森田弁護士が静かにつの封筒を置いた。
「美咲さん。お母様が遺されたものは、あのの売買契約だけではありません」
「……え?」
「お母様は、あなたがでその沼に放りされることを、決して許しませんでした。