"売上150倍の料理長を追い出し、客が7割消えた" 第5話
このまま終わらせるわけにはいかない。やっぱりこのにはさんこそが必欠だったんだ」
夫はをびし、トラバスカレーへと向かった。
夫はトラバスカレーの扉をけた。
「失礼します」
内はまだ準備のようだった。
僕は驚いて振り返った。
「あのおはまだ準備で、どうしたんですか夫さん」
夫は僕にすがりつくように言った。
「さん、こんな急に来られても困るんですけど。そんなこと言ってるじゃないんですよ。もう困るどころかもう果てるんです。困り果てるんです」
僕はずさりした。
「そう言われても僕にはどうすることもできないですから」
夫は僕の腕を掴んだ。
「そんなこと言わずに。さんしかどうにかできるはいないんです。うちはもうこのままじゃ経営破綻してしまうんです」
僕は夫のを振り払った。
「今は仕込みの途ですし、僕はもうこのおからるつもりはありません」
夫は必な顔でいがった。
「そんなの待っていられないんですよ。それにこのトラバスカレーで働き始めたのだって俺たちのカレーで働いてた数からしたら微々たるものでしょ」
僕は仕込みの鍋を指差した。
「そんなの事な程なんですよ」
夫は鍋のを覗き込んだ。
「体その仕込みって何なんですか?このもさんが入ってから気も伸びてるし。
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うちらって同じスパイスを使ったのに」
夫は僕を問い詰めた。
「どんなノウハウが」
その、奥からの男性がてきた。
「さん、どうされました?」
夫は男性を睨みつけた。
「な、なんだあんた?」
男性は穏やかに微笑んだ。
「このおのさんです」
夫はで笑った。
「あんたがか。どうやってをたぶらかしたのからないが、あんたのせいでさんがうちには戻らないとか言ってるじゃないか」
は静かに首を振った。
「たぶらかしたなんて。さんはあなたとは違って真っ当に僕のことを評価してくれただけです」
は夫を見据えた。
「あなたの話は伺っていますよ。ノウハウがどうとか言っておられましたが、それはさんの働きっぷりを見ていればおのずと分かります」
夫は眉をひそめた。
「あえ」
は言葉を続けた。
「さんはその経験からスパイスをただ使うのではなく、熟成させてりの体を捉えたり調のバランスをえたりしてくださっているんです」
夫は目を見いた。
「りの体。そのバランス調でがまれていたのか」
は頷いた。
「同じスパイスをただ使えばいいということではないんですよ。この経験に裏打ちされた職としての技術こそが現を支える何よりのノウハウなんです」
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夫は力なく呟いた。
「そうだったのか」
は厳しい声で言った。
「それを確認しようともせずに自ら放してしまった。それは紛れもなくあなた自の問題です。周りのせいにしようとしないでください」
夫はくをげた。
「この通りです。すみませんでした。謝りますから。だからうちにもう度戻ってきてくれませんか?」
僕は静かに断った。
「僕がおをれるに、次のステージに羽ばたいてみたらとおっしゃってくれたのは夫さん自ですよね。実際に育ってみてして働ける環境に来れましたし、放す気にはなれないですよ」
夫は顔をげた。
「な、なんですか?その実力をにできたのもうちで働いていた経験があったからこそですよね。ちょっとじゃないんですか?」
は静かに言った。
「いいえ。さんはうちに転職する以、こちらがどれだけオファーをかけてもそれに応じることはありませんでした。あなたたちのおに恩があると言ってね。その気持ちも何もじずに先に放したのはあなたの方です」
夫は絶句した。
「あ、そんな事があったなんてらなかったんですよ」
はややかに言った。
「らずとも実際売だってげているのだから、しっかりと評価さえしていれば良かっただけです。おのことを考えたらどれだけ料をしても絶対に放したくないですから」