"境界の桜庭茶房 ~現代飯と国宝で、どん底から人生やり直します~" 第11話
初老のが、力なくをげる。
「お嬢さん、うちの綿布団に目を留めてくださったのはありがたいが……倉庫には寄付用に残した千枚程度しかありませんよ」 「千枚ではりません。万枚、今すぐ買い取りたいんです」 「……は?」 「万枚です。さは問いません。倉庫にある庫も、これから作る分も、すべてで買い取らせてください」
よりは付として、分い札束の束をテーブルに置いた。 の職たちが目を見張り、は震えるでを抱え、やがて涙を流してくをげた。 「械をかせ……! 全員集めろ! は潰さん、うちの綿でを救うんだ!!」
数、榊原の配した巨倉庫から、異界の茶の勝を通り、信じがたい景が広がった。 頑丈な現代の緑の型テント数百張、そして純の綿がぎっしりと詰まった万枚のの綿布団が、被災へと次々と送り込まれていったのである。
平の広には、緑のテントが然とち並んでいた。 たいのに藁を敷いて震えていた難民たちが、ふかふかの綿布団に包まれ、涙を流しながら温もりを噛み締めていた。
「母ちゃん……このお布団、すごくあったかいよ……」 「ああ、助かった……これで、凍えなずに済む……」
守率いる軍勢が然と配を取り仕切る、よりはテントの片隅で、物々交換のを設けていた。
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ただ施すだけでは、々の誇りを傷つけてしまう。どんな些細なものでも、対価として受け取るためだった。
そこへ、半ほどの赤子を抱いた若い母親が、おずおずとづいてきた。 母親の頬は削げ落ち、胸元から取りしたのは、鮮やかな刺繍が施された絹の肌着(腹がけ)だった。
「あの……度もにつけていない、品の腹がけです。失礼を承でお願いに参りました。私にはもう母乳がず、この子が飢えにしてしまいます……どうか、これをお饅に変えていただけないでしょうか」
よりは肌着をに取った。 緻密に縫い込まれた鳥の図柄。現代の械刺繍では決してせない、絹糸の艶と繊細なグラデーションがそこにあった。
「あなた、刺繍の職さんだったの?」 「はい……以は都の呉に納めておりました。でも、こんなもの何の役にもたなくて……」 「そんなことないわ。素らしい技術よ」
よりは温かい鶏のスープ鍋と、蒸したての肉まん数個を母親に渡した。 「慮しないで、まずはお腹いっぱいべて。母乳がるようになるまで、毎ここに来ていいのよ」
母親は湯気を浴びながら、泣き崩れるようにしてスープをみ干した。
その夜、茶に戻ったよりは、買い取った腹がけを眺めながら閃いた。 「音、ちょっとこれを見て」
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「わあ、すごく綺麗な刺繍! これ、もっとさく作れたりしないかな?」 「さく……? そうね、現代の球体関節形(BJD)のドレスのサイズなら……!」
現代の好たちのでは、本物の職が掛けた点物のドールが、数万円から数万円で取引されている。 翌、よりは被災のテントを回り、女性たちに呼びかけた。
「の、畑仕事ができない皆さんに、裁縫の仕事をお願いしたいんです。布はこちらで用します。裁断ができるは裁断を、刺繍ができるは刺繍を。につき文の当と、度の温かい事をお約束します」
絶望に沈んでいた女性たちの目に、希望のが宿った。 「私、仕てなら誰にも負けません!」 「刺繍なら任せてください!」
瞬くに専用のテントがちがり、女性たちのによって、精緻を極めたのひらサイズの豪奢な古典装がみされていった。 よりがそれを現代のSNSと画配信で紹介するや否や、注文通が鳴り止まなくなった。
『この超絶技巧の刺繍は何!?』 『国宝レベルの仕て……!』 『全種類買います、いくらでも払います!』
納品されたドールは瞬に完売し、被災の女性たちは自らので当を稼ぎ、族を養う尊厳を取り戻していった。 配に頼るだけの「難民」から、誇りある「職」へ。秩序は保たれ、を待つ々の顔には確かな笑顔が戻っていた。
がけるのの、宮から守を通じて、最位の勅使が桜庭茶へと遣わされた。