"境界の桜庭茶房 ~現代飯と国宝で、どん底から人生やり直します~" 第5話
「シュークリームののクリームも絶品ですわ!」 「この透な皮の老餃子、プリプリとしたと旨がたまらない!」
広から嘆のどよめきが沸き起こり、親族同が競うように皿を空にしていく。 そこへ、遅れてやってきた福のの番が「特別に取り置きした菓子を持って参りました」と傲に入ってきたが、当主は瞥もくれずにした。
「福のの菓子などもうよい! 美佐の配したこの茶菓こそ、の逸品である! 美佐、実に見事な差配であった!」
顔を真っ青にして打ち震える川の局と福のの番をに、美佐は凛とした笑みを浮かべてくをげたのだった。
この件により、桜庭茶の名声は気に頂点へと達した。 連、裾のにはから分のい貴族や武官、商たちが蛇の列を作った。 よりは混乱を防ぐため、現代の理券システムを導入し、メニューを替わり定に限定した。
そんなある、並んでいた若い武士が、カウンターで必にをげた。
「主、お願いだ! この定をつ、持ち帰りにさせてくれまいか!」 「ごめんなさい、持ち帰りは傷む危険があるからお断りしているの。ご族なら、に連れてきてくだされば……」 「兄は来られないのだ!」
武士は悔しそうに拳を震わせた。
「兄は……あの方の激戦を戦い抜いた英雄、榊原守(さかきばら まもる)将軍だ。
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戦から還して以来、いの傷から切の事を受け付けず、今は漢方薬だけで辛うじて命を繋いでいる。起きがることもできず、にに衰していく兄を、これ以見ていられないのだ……!」
周囲に並んでいた客たちがざわめいた。
「榊原将軍といえば、国を救った若き英雄ではないか!」 「主、俺の分の定を将軍に譲ってやってくれ!」 「私のもだ!」
客たちの温かい声に、よりの胸がくなった。
「皆さん、ありがとうございます。でも、譲る必はありません。将軍のために、特別に消化が良くて栄養のあるものを仕てますから」
よりは持ち帰り用の保温容器を取りし、滑らかな胡麻ダレを絡めた特製のえ麺、滋養あふれる蒸し鶏の薬膳スープ、そして透き通るような老蒸し餃子をく詰め、持たせた。
その夜、厳格な静寂に包まれた榊原の敷。 病に横たわる榊原守は、青い顔で息を荒げていた。目のに置かれた料理を見ても、普段なら吐き気しか催さない。だが――蓋をけた瞬、漂ってきたスープの優しいりに、守の腔がかすかにくすぐられた。
「兄……だけでも」
弟の懇願に、守は々しくレンゲをに取り、スープを含んだ。 胡椒と姜がほのかにる温かい汁が、乾ききった喉を滑り落ち、え切った胃袋に染み渡っていく。
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「……旨いな」
数ヶぶりに漏らされた守の言葉に、付き添っていた医師と族が息を呑んだ。 守は自ら箸を取り、プリプリとした老餃子をに運び、麺を啜った。
「これほど滋に満ちた料理は……まれて初めてだ。腹の底から、力が湧いてくるようだ……」
翌から、守はしずつ庭を歩けるまでに回復していった。 茶に通い詰めるようになった弟を通じ、守からよりへ、謝の印として数々の礼の品が届けられた。そのには、かつて宮の貴な分であった守の伯母(ご台所様)が用していたという、豪奢な装飾品式が含まれていた。 何百粒もの希な真珠と鮮やかな宝、鳳凰の細が施された、当代無比の豪奢な首飾り(ネックレス)だった。
「こんな価なもの、受け取れないわ……」 「兄からのからの謝です。どうか納めてやってください」
よりはその首飾りを切にに保管し、音と緒に文字の読みきを教えながら、穏やかな々を過ごしていた。 寄りのない音は、よりを実の姉のように慕い、よりの苗字をとって「桜井音」と名乗るようになっていた。
だが、運命の歯は、現代の世界でも音をてて狂い始めていた。
ある、よりのスマートフォンに、代の同窓会を兼ねた『会館・文化財チャリティオークション夜会』の招待状が届いた。
差は、あの骨董鑑定の・榊原正教授。