みかん小説
本棚

"境界の桜庭茶房 ~現代飯と国宝で、どん底から人生やり直します~" 第3話

「辛さをらげる特製のミルクティーです。どうぞ」

濃なミルクと茶のり、品な甘みが、照った舌を優しく包み込む。美佐は陶然とした面持ちでため息を漏らした。

「素らしいわ……主、これは本物のよ。お釣りは取っておいて頂戴」

その美佐たちがった夜、今度は属の擦れう々しい音がづいてきた。 現れたのは、刀を帯びた屈な武官たちだった。先につ筋骨逞しい若武者――副将の稲葉川が、険しい顔で周囲を警戒しながら内を見回す。

「こんな里れた裾に、なぜ若い娘がでをしている……? 怪しい者ではないな」 「通りがかりの旅さん向けの茶ですよ。怪しい薬なんて入ってませんから、どうぞ」

よりが笑顔で迎えると、旅と警備で腹を空かせていた武官たちは、カウンターに並んだ湯気をてるきな肉まんに目を奪われた。

「主、その饅を全部くれ! 同僚たちにも持ち帰りたい。温かい飯など、もう何もにしていないのだ」 「蒸したての肉まんなら個ありますよ。すぐ包みますね」

稲葉は々の肉まんにかぶりついた。ふっくらとした純のから、溢れんばかりの肉汁と玉ねぎの甘みがジュワリといっぱいに広がる。

「な……なんだこの柔らかさは!? 具がぎっしり詰まっていて、噛むたびに脂が溢れす……! のどの級料理でも、こんな気のいい饅はえんぞ!」

広告

稲葉は激のあまり貨を惜しげもなく払い、背嚢いっぱいに肉まんを詰め込んで陣営へと駆けていった。

翌朝、軍の駐屯では、稲葉が持ち帰った肉まんを巡って兵たちが狂乱していたという。 美佐もまた、親友の令嬢を連れて再びを訪れていた。よりがしく仕込んだ「ふんわりロールケーキ」とシュークリームをにした令嬢たちは、歓声をあげてを取りった。

「信じられない……に入れた瞬、のように消えてしまいましたわ!」 「で番の菓子『福の』の職でさえ、こんなふわりとした蛮菓子は作れません!」

しかし、その評判が広がるにつれ、穏なもまた忍び寄っていた。 最の老舗菓子商『福の』の番・科のに、裾の茶の噂が届いたのである。

「裾のボロが、が『福の』を凌ぐ菓子をしているだと……? 調子に乗りおって。おい、数連れてその茶を探ってこい。営業を邪魔してレシピを吐きさせるのだ」

数、福のの息のかかった屈な男たちが、の桜庭茶を取り囲んだ。

「おい、主をせ! 福のの科様がおのレシピを買い取ってやるそうだ。しく差しせば遣い銭くらいにはなるぞ!」

男たちがに押し入ろうとしたその、内の奥から漂ってきたのは、ばしく濃な甘辛いタレと、パリパリに焼きげられた鴨肉の芳――本限定の『京ダックローストダック』の匂いだった。

広告

「な、なんだこの猛烈に旨そうな匂いは……」

威勢の良かった男たちのが止まり、喉が激しく鳴る。

「べる気がないなら、のお客さんの邪魔ですから帰ってください」

よりがややかに言い放つと、男たちの領は顔を真っ赤にしながら叫んだ。

「だ、誰が帰るか! 皿寄こせ! かったらごと叩き壊してやるからな!」

カウンターに叩きつけられたを横目に、よりはい皮に包んだ艶やかなローストダックを差しした。男がいに頬張った瞬、その表が凍りついた。 パリッとした皮のよい歯ごたえ、凝縮された鴨の脂の旨、甘辛い甜麺醤と爽やかな葱の調。

「う、美すぎる……なんだこれは、肉がとろけるぞ……!」 「おい、俺にもわせろ!」

男たちは互いに奪いうように皿を舐め尽くし、たい炭酸料を気みすると、すっかり骨抜きになって顔を見わせた。

「……お、福のに戻ってどう報告しますかい?」 「……ありのまま言うしかねえだろ。あのは福のより倍美い、しなんざできねえってな!」

捨て台を残して逃げ帰る男たちの背を見送り、よりはふうと息をついた。

そんなあるの午、最初の常連客である老農夫・茂蔵が、さな女のを引いて現れた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: