"消えた新郎と「探すな」と言った花嫁" 第15話
父の会社の役員たちが狼狽してちがりかけるのが見えた。
私は壇へ続く階段をがり、司会者のから、迷うことなくワイヤレスマイクをもぎ取った。
「あ、相沢様……!?」
司会者の制止を無し、私は百の線のど真んにった。
「美紀、やめろ!」
父が声で、だが獣のような形相で詰め寄ってきた。 腕を掴もうと伸ばされたそのを、私は酷に払い落とした。
マイクのスイッチを入れる。 キーンと、いハウリングがスピーカーから鳴り、会の私語が完全に止まった。
喉の奥が、張り付くように乾いていた。 臓が、肋骨を壊す勢いで暴れている。
息をく吸い込んだ。 そして、私はをいた。
「本はお忙しい、お集まりいただきありがとうございます」
会の空気が張り詰める。
「皆様にご報告がございます。本の結婚式および披宴は、執りわれません」
どよめきが、鳴りのように起きた。
父がマイクを奪おうとにた。 私は歩がり、父の目を真っ向から見据えたまま、声を張りげた。
「郎の瀬悠さんは、今、病院にいます。ですが――式を取りやめるのは、悠さんが事故に遭ったからではありません」
会のざわめきが、ピタリと止まった。
誰もが、私の次の言葉を待っていた。
「昨夜の点で、私と悠さんのが、この結婚式を挙げないと決めていたからです」
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親族席から鳴のような声ががった。 父の会社の鎮たちが、信じられないものを見る目で目を見張っている。
「半、私たちは内だけのさな式を望んでいました。ですが、ここにいる私の父、相沢正彦がそれを許しませんでした。百を超える参列者、百万円の費用。すべては父の会社の取引先に見せつけるための、父の世体を満たすための台でした」
「美紀! を慎め!」
父の声がんだ。 だが、もう誰も父を見ていなかった。 百の線が、壇の私に釘付けになっていた。
「父は、披宴の席で、私たちの同もなく『娘夫婦が京での仕事を捨て、静岡の実に戻って跡を継ぐ』と公表しようとしていました。そのために、私のプライベートな発言を切り貼りした映像を、業者にを積んで作らせていました」
客席が騒然となった。 役員たちが顔を見わせ、眉をひそめている。
「悠さんは、昨夜、その映像を止めるためにで業者と交渉しにき、そこで起きた争いに巻き込まれて傷を負いました。……悠は、逃げしたのではありません。私を守るために、でこの理尽な罠を壊そうとしてくれたんです」
涙はなかった。 声は、自分でも驚くほど静かで、どこまでも澄んでいた。
「今朝、ホテルから連絡があった、私は『悠を探さないでくれ』と言いました。
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父の力で連れ戻され、無理やりこの台にたされるのを防ぐためでした。でも、私は違っていました。悠にすべてを背負わせ、自分は逃げることしか考えていなかったからです」
私はマイクを両で握り直し、々とをげた。
「本、を運んでくださった皆様には、なご迷惑とご配をおかけしたことを、よりお詫び申しげます。会のキャンセル料、の損害、発するすべての違約は、相沢商事のではなく、私と悠さんのが、これからのをかけて全額支払います」
をげると、最列に座る父の姿が目に入った。
父は、壇の端にをついたまま、力なくち尽くしていた。 顔面は気に濁り、唇をわなわなと震わせている。 百の取引先の、軽蔑と困惑の混ざったややかな線が、斉に父の背に突き刺さっていた。
父がをかけて守ろうとしてきた「世体」が、今、々に砕け散った瞬だった。
私は父に向き直った。
「お父さん」
マイクを通した私の声が、父の元に届く。
「育ててくれたことには謝しています。でも、私のは、お父さんのものじゃない。私は、度とあなたの敷いたレールのには戻りません」
父は何も言い返せなかった。 威厳に満ちていた肩はさく縮こまり、ただの点を見つめたまま、老のように震えていた。
私はマイクをテーブルのに静かに置いた。
会の沈黙を背に受けながら、私は度も振り返ることなく、壇をりた。