"消えた新郎と「探すな」と言った花嫁" 第13話
『瀬さんは量に血し、そので識を失った。藤堂はパニックになった。救急を呼べば、傷害事件になり、裏のことも公になる。自分のキャリアがすべて終わる恐怖に駆られた藤堂は……瀬さんを、スタジオの最奥にある材保管庫に引きずり込んだ』
「引きずり込んだ……?」
父が、震える声で呟いた。
「病院へ……病院へ連れてかなかったのか……!?」
『連れてかなかった。藤堂の供述では、朝になって瀬さんの識が戻ったら、を握らせて示談にするつもりだったと。……だが、今朝過ぎ、様子を見にくと瀬さんが血まみれのままをっており、首の計でどこかへ話をかけようとしていた。驚いた藤堂は、計をもぎ取ろうとして揉みいになり、通話を切断して、そのまま倉庫の鍵を閉めて逃した』
分の、あの通話。
悠は、割れるようなの痛みに耐えながら、真っ暗な密で、れゆく識ので必に父の番号を押したのだ。 助けを呼ぶためじゃない。 私を守るために。
『……にげろ……びでおを……』
あの掠れた声が、ので何度も、何度も霊する。
悠は、にかけていたその瞬でさえ、私があの披宴で父親にを売り渡されるのを止めようとしていた。
「救急隊を!」
私は叫んだ。喉が裂けるほどの声だった。
「く、救急隊を向かわせて! 今すぐ鍵をけて!」
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主任刑事が無線に向かって叫び返した。
「神奈川県警がすでに現へ急している! だが……問題がある!」
刑事が、顔を歪めて言った。
「藤堂が状した。瀬さんを閉じ込めた奥の部は、防音施された完全密閉の材庫だ。窓はひとつもない。……そして、昨夜から換気設備もエアコンも、ブレーカーごと落としてあると」
密閉された、防音。 窓のない、空気の通らない鉄の箱。 部から血を流したまま、以。
「兄ちゃん……!」
真帆ちゃんがそのに崩れ落ち、を叩いて号泣した。
父は、をけたままち尽くしていた。 その顔には、自分が何を引き起こしたのかという、底れぬ恐怖と絶望が刻み込まれていた。
私は、父の胸元についていたいチーフを、力任せに引きちぎった。
布が裂ける音が、静まり返った防災センターに響く。
「……これが、あなたの守りたかった世体よ」
私は父の元に、丸めたチーフを投げ捨てた。
「満した? あなたのおと見栄が、を殺しかけてるのよ!」
父は何も答えなかった。 ただ、幽霊のように震えながら、に落ちたい布を見つめていた。
パトカーのサイレンが、ホテルので甲く鳴り響き始めた。
私はドレスの裾をたくしげることもせず、に向かってりした。
午分。
横浜内の救急救命センターから、刑事の携帯に連絡が入った。
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スピーカーから漏れた救急医の乾いた声が、え切った防災センターに響き渡った。
『蓋骨骨折および傷性くも膜血の疑い。量の血と脱症状がありましたが、搬送に呼びかけに対して辛うじてしました。緊急の術は回避できそうです。……命は取り留めました』
真帆ちゃんがそのに崩れ落ち、両で顔を覆って声をげて泣いた。
きてる。 悠は、きていた。
全の関節から気に力が抜け、私は壁に肩をもたれかけて荒い息を吐いた。 界が涙で滲んで、元がぐらぐらと揺れた。 胸の奥を締め付けていた鉛の塊が溶け落ちていくのと同に、激しいりが、え切ったマグマのように腹の底からせりがってくる。
「……よかった」
背から、擦れた声が聞こえた。
父だった。 額の脂汗をハンカチで拭いながら、胸を撫でろしている。 その表に浮かんでいたのは、悠の無事に対する堵ではなかった。 「これで殺犯の親にならずに済んだ」という、醜悪極まりない保の堵だった。
「倉田さん」
父はネクタイを締め直し、わずか数分でいつもの傲な経営者の顔を取り戻していた。
「宴を分遅らせなさい。司会者にはこう伝えるんだ。『郎が会へ向かうで急性胃腸炎を起こし、急遽病院へ搬送された。
式は延期とするが、本は相沢商事の取引先への謝の集いとして、披宴の席をそのまま懇親会に切り替える』とな」