"消えた新郎と「探すな」と言った花嫁" 第12話
「藤堂の最初の供述です。『昨夜、ホテルので瀬さんに待ち伏せされた。映像の件で文句を言われたが、ので話しい、納得してもらった。その、品川駅の港でろした。自分はそのまま鶴見の自宅へ戻った』と主張しています」
「嘘よ!」
真帆ちゃんが叫んだ。
「兄ちゃんが納得するわけない! それに、品川駅でりたなら、なんで財布もスマホも持たずに朝まで放置されてるのよ!?」
「ああ、もちろん嘘だ」
主任刑事が氷のようにたい目で言った。
「Nシステムの記録と、首都のETC履歴と完全に矛盾している。ハイエースは品川駅にはち寄っていない。ホテルをた、そのまま羽田線をし、鶴見の黒埠方面へ直している」
そして、無線から次の報告が続いた瞬、部にいた全員が息を呑んだ。
「現の鑑識から速報です。押収したハイエースの内、助席のシートの隙から、瀬さんのものとわれる茶のドキュメントケースを発見しました。……そして」
無線の向こうの捜査員が、唾をみ込む気配がした。
「助席のフロアマットと、ドアノブの内側から、拭き取られた微量の潜血反応がました。ルミノール陽性です」
「……血?」
真帆ちゃんのから、かすれた鳴が漏れた。
血。 悠の、血。
目のがぐらりと揺れ、が元から消えるような覚に襲われた。
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喉の奥が引き攣り、胃液が逆流してくる。
昨夜、悠が私に向けてくれた、あの穏やかな笑顔。 『逃げよう。キャンセル料の何百万円だって、で働いて返せばいい』 そう言って私のを包み込んでくれた、温かいのひら。
あのが、血に染まっているの?
「藤堂を締めげろ!」
主任刑事が無線に向かって鳴りつけた。
「Nの記録と血痕を突きつけろ! 鶴見でどこへち寄ったのか吐かせろ! 刻を争うぞ!」
防災センターの壁の計は、無にも【8:30】を刻んでいた。
本来なら、披宴のヘアメイクが仕がり、両の親族が控に集まり始めるだった。 ロビーにはすでに、静岡からチャーターバスで到着した親族や、父の会社の役員たちが集まり始めているはずだった。
けれど、誰もそのをけなかった。 父も、私も、真帆ちゃんも、ただ無線から流れるノイズにを澄ませていた。
分が過ぎた。 分が過ぎた。
永のようにえる沈黙の、無線がバチリと音をてた。
取調からの通信だった。
捜査官の息が荒い。
「……落ちました。藤堂が自供を始めました」
真帆ちゃんが私の腕を両で固く抱きしめた。 爪が肉にい込む。痛かった。けれど、痛みに耐えなければ、識が途絶えてしまいそうだった。
「どこにいるの……? 兄ちゃんは、きてるの!?」
真帆ちゃんの叫びに、無線の向こうの刑事が、痛ましい声で答えた。
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「藤堂は……昨夜、鶴見区潮田町にある、自分の材倉庫兼スタジオに瀬さんを連れてったと供述しています」
画面の向こうで、事件の輪郭が々しく暴かれていく。
昨夜、ホテルの搬入で悠に詰め寄られた藤堂は、「ので元データを渡す」と嘘をついて悠をに乗せた。 だが、藤堂はデータを渡す気など毛なかった。 父・相沢正彦から、正規の制作費とは別に、現で百万円の「特別報酬」を払いで受け取っていたからだ。
『披宴で確実にあの映像を流せ。途で郎婦が何を言ってきても、絶対に差し替えるな。責任はすべて私が持つ』
父が藤堂に突きつけた、裏の契約。 藤堂にとって父は、独の恩であり、逆らえば業界できていけなくなる最のパトロンだった。 百万円の裏を受け取った以、映像を渡すわけにはいかなかった。
は、鶴見の沿いにある、古い鉄骨造りの材倉庫へ向かった。 そこで、決定な衝突が起きた。
悠は、パソコンに繋がれたマスターディスクを力ずくで奪おうとした。 藤堂はそれを遮ろうとし、狭い材の入りで激しい揉みいになった。
そして――
『……突きばしたんだと』
刑事が、苦渋に満ちた声で言った。
『藤堂が両で瀬さんをく突きばした。瀬さんはバランスを崩して部から倒れ、材ラックの鉄製の角にを激しく打した』
「……っ!」
私のから、声にならない叫びが漏れた。