"消えた新郎と「探すな」と言った花嫁" 第11話
非常扉がき、悠が現れた。 濃紺のシャツの袖をまくり、表は険しい。 そして、その脇のには――分い茶のドキュメントケースが抱えられていた。
「あいつ……何を抱えているんだ」
父が背から呻くように呟いた。
「あれは、打ちわせの資料です」
倉田さんが即座に答えた。
「披宴の表の原本と、演に関する契約の控えです。昨、プランナーから瀬様にお渡ししたファイルです」
画面のの悠は、迷うことなくの搬入へと向かっていった。 巨なトラックが横付けされる、暗い荷捌き。
タイムスタンプは【23:41】。
暗い搬入の片隅に、ハザードランプを点滅させた台のの業務用ハイエースがまっていた。 スライドドアの横に、見覚えのある男がっていた。 黒いウインドブレーカーを着て、神経質そうにタバコを吸っている男。
藤堂修平だった。
悠は藤堂にづき、抱えていたドキュメントケースを突きつけるようにして何かを激しく問い詰めている。 無音のカメラ越しにも、のに漂う殺気配が伝わってきた。 悠の振りがきくなり、藤堂はずさりしながらをげ、何かを弁解しているように見える。
そして、【23:49】。
藤堂が運転席に乗り込み、悠が助席のドアをけて乗り込んだ。 のハイエースは、のスロープを駆けがり、品川ののへと消えていった。
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「……藤堂だ」
父の元が、目に見えてふらついた。
「なぜ、あいつが瀬君をに乗せている……?」
「あなたが、番よくってるはずでしょう!」
私は父のにちはだかり、激しいりを込めて睨みつけた。
「悠は、ビデオの原本を取り戻しにったのよ! あなたが藤堂さんに作らせた、あのグロテスクな映像のデータを消させるために!」
「藤堂の携帯に連絡はつかないのか!」
刑事がホテルのスタッフに声を浴びせる。
「先ほどから何度もコールしていますが、呼びし音が鳴るだけでません!」
「両ナンバーを全に配しろ。『品川 500 つ 88-21』、のハイエースだ。Nシステムを叩け!」
無線からび交う号が、事態がすでに「結婚式のトラブル」などというぬるい領域を遥かに越え、完全な警察事案へと発展したことを告げていた。
あとで、百の客がやってくる。 私の親族も、悠の親族も、幹線に乗って京へ向かっている。 けれど、そんなことはもう、私の脳裏から完全に消えっていた。
悠が、きているかどうか。 それだけが、私の世界を塗りつぶしていた。
午分。
事態は、最悪の形で急転した。
「藤堂の両、捕捉しました!」
無線から、張り裂けんばかりの声がび込んできた。
「横浜鶴見区、産業沿いのコインパーキングにて対象両を発見! 付のコンビニエンスストアからてきた本を、捜査員が任で確保しました!」
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臓が、ねがった。
「悠は!? 悠は緒にいたの!?」
私は刑務官の腕にすがりついた。 刑事は無線にを押し当て、い表で首を横に振った。
「……内に、瀬さんの姿はありませんでした。藤堂単独です」
のが真っになった。
姿がない? じゃあ、悠はどこへったの? あの秒の、血を吐くような呻き声は何だったの?
刑事課の主任が、矢継ぎに現の捜査員に指示をばす。
「藤堂を至急、品川署へ連しろ! それと鑑識を呼べ! 両の内部を徹底に調べろ、ルミノールだ!」
父は壁に背をもたせかけ、呼吸を乱していた。 ネクタイを緩め、額には脂汗が滲んでいる。
「藤堂が……そんなことをするはずがない。あいつは、私の昔からのりいの息子だぞ……。独するに、私が事務所の材代を面してやった恩があるはずだ……」
「その恩を、あなたが利用したんでしょう!」
私は父に叫んだ。
「を積んで、恩を着せて、娘の首に縄をかけるような映像を作らせた! あなたたちの汚い貸し借りのに、悠が巻き込まれたのよ!」
父は言い返せなかった。 ただ、蒼な顔で唇を震わせ、力なく線を彷徨わせているだけだった。
午分。
品川署の取調から、無線を通じて現の主任刑事へ報告が入った。 スピーカーから流れる刑事の徹な声が、防災センターのえ切った空気に突き刺さる。