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"消えた新郎と「探すな」と言った花嫁" 第8話

度世に公表してしまえば、から覆すことは能になる。

父は、この結婚式という台を利用して、私と悠のを力ずくで買い取ろうとしていたのだ。

『の披宴の途で流す予定の、あの映像を絶対にキャンセルしてくれ。映のマスターデータを差し替えるんじゃない、映そのものを取りやめてほしい。……特に、彼女の父親には絶対にられないようにしてくれ』

昨夜の、悠の切迫した声が脳裏に蘇る。

悠は、これを見たのだ。 昨の午、納品の映像をチェックした悠は、このグロテスクな企みに気づいた。 そして、私をこれ以傷つけないために、でこの映像を止めようとした。

「お姉さん!」

調のドアが勢いよくき、真帆ちゃんがび込んできた。 肩で息をしている。そのには、真帆ちゃん自のスマホが握られていた。

「警察の、今ホテルに来てる! ロビーの奥の応接で話を聞いてるって! ……それと、これ見て!」

真帆ちゃんがスマホの画面を私に突きつけた。

表示されていたのは、悠のGmailの送信履歴のスクリーンショットだった。 悠の自宅のPCと同期している真帆ちゃんのタブレットから、転送したのだという。

送信は、の夜。 宛先は――父、相沢正彦。

件名:【結婚式における発表事項についてのお願い】

本文を読んだ瞬、私の臓が凍りついた。

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『相沢正彦様

突然のメールにて失礼いたします。 先のお打ちわせの際にお話しいただきました、私の貴社への移籍、ならびに静岡への転居の件につきまして、改めて私の志をお伝えいたします。

私は現の設計事務所での業務に誇りを持っており、退職する志はございません。 また、美紀につきましても、京でのデザイン業務を継続することをく望んでおります。 従いまして、披宴の席におきまして、私たちの向に反する発表をされることは、断じてお控えいただきますようお願い申しげます。

もし、私たちのこの志が尊されないのであれば、 変苦しいことではございますが、私たちは本結婚式の挙自体を再考せざるを得ません。

瀬悠』

悠は、戦っていたのだ。

私が父の顔を窺い、言いなりになって過呼吸を起こしている、 悠はで、父という巨な壁のにち塞がっていた。

そして父は―― このメールを受け取っておきながら、何も言わずにあの映像の編集をした。 悠の警告を完全に無し、力ずくで押し潰そうとしたのだ。

『男なら、妻の親が用した台くらい堂々と背負ってみせなさい』

父のあの傲な嘲笑が、の奥で反響する。

父はっていた。 悠が式をボイコットする能性があることを、最初からっていたのだ。

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「……お姉さん?」

真帆ちゃんが、私の顔を見て息を呑んだ。

「丈夫……? 顔、真っ青だよ」

「真帆ちゃん、警察のところへ戻って」

私は自分の声が、信じられないほどたく沈んでいるのをじていた。

「美紀さん、どこへくんですか!?」

倉田さんの制止の声を背に浴びながら、私は調をびした。

エレベーターにび乗り、階のボタンを乱暴に押す。 昇する箱ので、自分の荒い呼吸の音だけが響いていた。

許せない。 自分の見栄のために、私のを踏み躙るだけでは飽きらず、 悠の尊厳まで奪おうとしたあのを、私は絶対に許さない。

階に着くと、私は廊をりでみ、父が控として使っているVIPスイートのにった。 ノックなどしなかった。 力任せにドアを押しける。

部のでは、父が革張りのソファにく腰掛け、ブラックコーヒーをんでいた。 傍らには、会社の秘が直している。

私の血相を変えた姿を見ても、父は眉ひとつかさなかった。

「ノックもなしか。育ちの悪さがるぞ、美紀」

「藤堂さんの映像、見ました」

私は部の央まで歩み寄り、父を見ろした。

秘が居悪そうに線を泳がせ、父の目配せを受けて無言で部をていく。 カチリと、ドアの鍵が閉まる音がした。

「悠が送ったメールも読みました。……お父さん、全部ってたんでしょう」

父はカップをソーサーに戻した。カチャリと、陶器のたい音が鳴る。

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