"消えた新郎と「探すな」と言った花嫁" 第7話
画面のから、藤堂さんの当たりのいい声が聞こえる。
画面のの私は、し照れくさそうに笑って答えていた。 『ええ。先、初めて舗の内装デザインを任せてもらえて。すごく変ですけど、自分の名で仕事ができるのが、今は本当に楽しいんです』
『結婚しても、そのお仕事は京で続けるおつもりですか?』
『もちろんです。悠さんも、私の仕事を誰よりも応援してくれていますから』
そこまでは、のない雑談だった。 しかし、次の瞬、画面の藤堂さんの質問のトーンがわずかに変わった。
『もし……お父様から、静岡の実に戻って業を継ぐように言われたら、どうされますか? お父様は、おで会社をきくされた派な方ですよね』
画面のの私が、困ったように眉をげた。 そして、さく息を吐いて、こう言ったのだ。
『……それは、お父さんを失望させることになるといます』
『失望、ですか?』
『はい。父は昔から、私のを全部自分で決めたいなんです。でも、私は父の会社の飾り物にはなりたくない。悠さんと緒に、自分たちのでっていきたいんです。もし父がそれを許してくれないなら……戦うしかありません』
私の指先が、え切っていく。
いした。 言った。確かに私は、あのそう言ったのだ。 けれどそれは、「テスト撮だから本編には絶対に使わない、だけの内緒話だ」
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と藤堂さんが笑って約束したからこそ、漏らしてしまった本音だった。
画面が暗転した。
そして、次のカットが現れた瞬、私は息を呑んだ。
画面いっぱいに映しされたのは、会社の社のなデスクに座る、私の父だった。 背には文字でかれた社訓の額縁。 父はカメラに向かって、これ以ないほど温かい、慈に満ちた笑みを浮かべていた。
『娘の美紀は、母親がくにてってから、私のひとつで育ててまいりました。々頑固なところもありますが、私の誇りです』
父の声が、朗々と響き渡る。
『そして、郎の瀬悠君。彼とも何度も腹を割って話しいました。若くして独を志す気概は素らしいが、やはり族というものは、ひとつの傘のに集まるべきだ。……本、このめでたき席をお借りして、皆様にご報告がございます』
父はデスクのに置かれた類をに取り、カメラに向けて掲げた。
『瀬君は来付で現の設計事務所を退職し、が相沢商事の取締役に就任することが決定いたしました。そしては、私のむ静岡の本宅の敷内に居を構え、私と共に歩んでいくことになります。これは、私と、美紀と、瀬君の、がから納得してした決断です』
「……な、にこれ」
唇が、刻みに震えた。
何これ。 どういうこと?
悠が、父の会社の取締役に就任する? 私たちが、静岡の実の敷にむ?
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そんな話、度だって承諾したことはない。 悠が自分の設計の仕事を捨てるはずがない。 私たちが京に居のマンションを借りたのは、父の干渉から逃れ、自分たちの活を守るためだったのに。
映像はさらに続いた。
父の演説の直、先ほどの私のインタビュー映像が、悪に満ちた編集でインサートされていた。
『……父の会社の飾り物にはなりたくない』という部分は完全に切り取られ、 『父は昔から、私のを全部自分で決めたいなんです』という言葉のに、 父が微笑みながら『娘もこう申しておりますが、親というものはなかなか伝わらないものですな』と冗談めかして受け答えする構成になっていた。
そして、映像の最には、のフォントでこうテロップが躍っていた。
【相沢・瀬 絆の継承――静岡でのたなる】
「……っ!」
激しい吐き気が、胃の底からせりがってきた。
罠だ。 これは、ただのサプライズ映像なんかじゃない。
百を超える参列者。 父の会社の取引先、の鎮たち。 その全員の目ので、この映像を巨スクリーンに映しし、父が壇でらかに宣言するのだ。 『娘夫婦が静岡に戻り、跡を継ぐ』と。
拍采が巻き起こる会で、郎婦が「そんな約束はしていません」と言えるはずがない。 親族の、取引先の、私たちは笑いを浮かべてをげるしかなくなる。