"消えた新郎と「探すな」と言った花嫁" 第5話
「……嘘でしょ」
声が漏れた。
昨夜から今朝にかけての錠記録は、件もしなかった。 スマートキーの操作も、暗証番号の入力も、度もわれていない。
悠は、品川のマンションにってすらいないのだ。
「お姉さん……? どうなの? 兄ちゃん、いるの!?」
真帆ちゃんが私のスマホを覗き込もうとする。 私はそのを振り払うようにして、管理会社の緊急サポートダイヤルへ発信ボタンを押した。
コール音が回。
『はい、オーク・サポートセンターでございます』
「あ、あの! 302号を契約している相沢です! 今、部のに誰かいらっしゃいますか!? 気は、気はついていますか!?」
私のただならぬ調に、オペレーターが瞬たじろいだ。
『々お待ちください。現のスマート分盤のデータを確認いたします……。あ、相沢様。302号ですが、昨夜から現に至るまで、ブレーカーは落ちたままで力量の消費はゼロとなっております。どなたもお部には入られておりません』
受話から流れる械な声が、私のをたく通り抜けていった。
力量、ゼロ。 誰も、入っていない。
スマホがから滑り落ち、毛のい絨毯のに音もなく転がった。
「兄ちゃんは……?」
真帆ちゃんの震える声が聞こえる。
「兄ちゃん、どこにいるのよ……!?」
悠は、逃げしたのではなかった。 彼が自分の志でホテルをり、約束の所で私を待っているという私のい込みは、瞬にして打ち砕かれた。
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悠は、昨夜の分、フロントに「映像を止めろ」と話をかけた―― スマホも、財布も、結婚指輪も、すべてこの部に残したまま、忽然と消えったのだ。
部の壁に掛けられた計の針が、無慈に【6:15】を指していた。
廊のくから、な革靴の音が響いてくる。 聞き覚えのある、あの傲で、規則正しい音。
父が、来たのだ。
靴音が、控のドアの真んで止まった。
ノックの音さえなかった。 のドアノブが乱暴にがり、い製扉が側へ押しかれる。
「美紀、まだメイクにも入っとらんのか」
部に入ってきたのは、仕てのいい濃紺のモーニングコートにを包んだ父だった。 胸元には、いチーフが几帳面に覗いている。 歳。 代で会社を興し、業界の荒波をくぐり抜けてきた男特の、濁りのない、だがの気配を切寄せつけない。
父は部を見回し、私と、青ざめてち尽くす真帆ちゃん、そしてに散らばった類を見て、わずかに眉を寄せた。
「何を騒いでおる。のロビーにはもう、友物産の専務が見えられたぞ。受付の配はどうなっとるんだ」
その調には、郎が部にいないことへの疑問すら含まれていなかった。 父にとって、この披宴は秒単位で管理された事業計画と同じだった。 予定通りにまないことなど、最初から定にないのだ。
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「……お父さん」
私の声は、ひどくかすれていた。
「悠が、いないの」
父はネクタイの結び目を指先でえながら、を鳴らした。
「トイレにでもっとるんだろう。男というのは、台のに腹をしやすいものだ。倉田さん、く郎を連れ戻して着替えさせなさい。写真撮のが押す」
「お父様、そうじゃないんです!」
真帆ちゃんが、抑えきれないりを込めて叫んだ。
「兄ちゃんは昨の夜から戻ってないの! スマホも、財布も、指輪も全部置いたまま、忽然と消えたのよ! トイレなんかじゃない!」
部の空気が、凍りついた。
父の指が止まる。 線が、鏡台のに置かれた悠のiPhoneと、黒いベルベットのリングケースへとゆっくり移った。
ほんの瞬、父の目の奥に計算するようながったのを、私は見逃さなかった。 驚きではない。 焦りでもない。 自分の敷いたレールのに、予期せぬが転がり込んできたの、に満ちた徹な。
「……携帯を置いて、どこへったというんだ」
「分からないから言ってるのよ!」
真帆ちゃんの瞳から、粒の涙が零れ落ちた。
「昨の夜、過ぎに部をたきり、誰も兄ちゃんを見てないの。ホテル探してもいない! 事件かもしれないのよ!? 警察を呼ばせてください。今すぐ、警察に捜索届をします!」
「警察だと?」
父の元が、わずかに引きつった。