"消えた新郎と「探すな」と言った花嫁" 第3話
父の言で、すべてがに戻された。
式は、父の取引先であるこの格式いホテルに制に変更された。 だった招待客は、気がつけば百を超えていた。 席次表の半分以を占めるのは、父の会社の取引先、の支、元の商会議所の鎮たち。 私や悠が会ったこともない見らぬ男性たちの名が、主賓席にずらりと並んだ。
『おたちの若い覚など、世には通用せんのだ。費用は全部私が持ってやる。恥をかかないようにしてやるのが、親の責任というものだ』
父はいつも、慈に満ちた父親の笑顔でそう言った。 反論すれば、決まってこう返される。 『母さんがいなくなってから、誰がおをに育てたとっているんだ』
その言葉をされると、私は何も言えなくなる。 物ついた頃から刷り込まれた罪悪が、喉を塞いでしまうのだ。
料理のランクも、引き物のブランドも、装のさえも、すべて父が決めた。 悠の見など、最初から誰も聞いていなかった。
悠は、温で争いごとを好まないだ。 それでも、私の体調が目に見えて悪化していくのを見て、何度も父と対話しようとしてくれた。 『お父様、美紀は疲れています。どうか彼女の希望も聞いてやってください』と。
だが父は、悠の言葉をで笑った。
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『瀬君、君は設計事務所の雇われだろう。世の厳しさをらんのだ。男なら、妻の親が用した台くらい堂々と背負ってみせなさい』
結婚式の準備がむにつれて、私は眠れなくなった。 体はキロ落ち、鏡を見るたびに、自分が父親の操り形にしか見えなくなった。
そして昨夜――式のの午。 ホテルに泊するためチェックインした控で、私は過呼吸を起こして倒れ込んだ。
駆けつけてくれた悠は、私の背をさすりながら、静かに、けれどこれ以ないほどい声で言ったのだ。
『美紀、もうやめよう』
『……え?』
『の式は、やめよう。こんなの、君の結婚式じゃない。お父さんのための見せ物だ。ここで君が笑って父親の言う通りにしたら、君は、お父さんの呪縛から逃げられなくなる』
悠は私のを握った。そのは温かく、力かった。
『逃げよう。キャンセル料の何百万円だって、で働いて返せばいい。お父さんには、の朝、親族が集まるにで正式にキャンセルを告げよう』
その言葉を聞いた瞬、胸の奥で何かが弾け、涙が止まらなくなった。 私は初めて、自分のを自分ので歩けるような気がした。
私たちは計画をてた。 夜のうちに騒ぎてれば、父に力ずくで押さえ込まれる。 だから、夜のうちにずつホテルをることにした。
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夜零、まず悠が裏からタクシーでホテルをる。 私は朝、父が起きすの朝に部をる。 き先は、私たちが居として品川に内緒で契約していた、さな賃貸マンション。 そこで流し、朝半に双方の両親へ「式は取りやめる」という連名の面を送り、ホテルへ正式に違約の続きを取る――。
それが、私たちの「秘密の計画」だった。
「……だから、ジャケットを持っていたの」
私は真帆ちゃんを見つめ返した。
「悠の私物を分散して持ちすために、私が彼のジャケットを預かって自分の部に運んだの。悠が部にいなくなったのは、計画通りだったから。約束の所へ、先に移したんだとってた」
だから私は、フロントから連絡が来た「探さないで」と言ったのだ。 悠が無事にホテルを抜けしたのだと信じていたから。 父にられて、連れ戻されるのを防ぐために。
真帆ちゃんは呆然とち尽くしていた。 りの矛先を失い、ただ唇を震わせている。
「そんな……でグルになって、逃げすつもりだったってこと……? そんな勝なこと、許されるわけないじゃない!」
「勝なのは分かってる。でも、あのままじゃ私は壊れてた」
「じゃあ、なんで兄ちゃんはいないのよ!」
真帆ちゃんの鋭い声が、再び部に突き刺さった。
「計画通りなら、なんで兄ちゃんのスマホがここにあるの!? 財布だって、免許証だって置いてある! スマホも持たずに、兄ちゃんはどうやってタクシーに乗ったの!? どうやって品川のマンションに入ったのよ!?」