"理事長の孫が清掃員になった夜" 第7話
彼女の徹な線は、真っ直ぐに元に転がっているカップの破片へと向けられた。
「あら、それを割ったのはあなた? 清掃員のくせに、の掃除もまともにできないどころか、備品まで壊すなんて、派遣って本当にこの程度の役たずなのね」
「申し訳ありません……すぐに片付けます」
麗子は湯のほどまで歩みをめ、誠とはる子の顔を交互に鋭く見比べた。
「それより、勤務にサボって世話にを咲かせてる余裕があるなんて、いいご分ね川さん」
「崎先、カップを割ったのは私です。彼はただ、片付けを伝ってくれていただけです」
「ふん……」
麗子は笑を浮かべ、誠の顔を覗き込むようにして言い放った。
「派遣のって本当にどうしようもないものね。ヶもこの病院に居座っていながら、責任ってものを片たりとも覚えないのかしらね」
それだけを吐き捨てると、麗子はの裾を激しくひるがえし、湯からにちっていった。残された誠とはる子は、しばらくの、言葉を失ったまま静かに息をえていた。はる子は震える声で呟いた。
「あなた……本当に、いったい誰なの……?」
「今はまだ言えません。でもいつか、必ずすべてをお話しします」
はる子は何かを言いかけようとしたが、結局それ以の言葉をみ込み、何も聞き返すことができなかった。
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その夜、川はる子はもできないまま朝を迎えていた。彼女は何度もスマートフォンをに取り、最階の理事へ連絡しようと試みたが、この病院を牛ってきた崎麗子に対する恐怖が邪魔をして、どうしても発信ボタンを押す勇気がなかった。それでも、湯で見たあの若い清掃員のの目が、からどうしてもれなかった。あの青がにした「絵里子」という名。それは、のあの夜に自分が救えなかった、そしてずっとの奥底に封印し続けてきた患者の名だった。
「……私は、ものずっと黙り続けてきたのね……」
押し殺してきた声が、静かな部のでさく震えた。
翌、はる子は固い決を胸にエレベーターに乗り込み、病院の最階へと向かった。理事の扉のにつと、彼女はく息を吸い込み、ノックするにわずかな震えを覚えながらも扉を叩いた。
「どうぞ」
扉をけてに入ると、きな机に向かって類を検分していた慈郎が顔をげた。秘をに返したまま、単で訪ねてきたベテラン護師の姿に、慈郎はそうな表を浮かべた。
「川さん、君が珍しいね。いったいどうしたというのかね?」
「理事……今、おをしだけいただけますでしょうか。お孫様のことで……」
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その言葉を聞いた瞬、慈郎の表がわずかに険しく変わった。
「……孫のことについて、何かっているのかね?」
「はい。当院で派遣の若い清掃員として働いている、誠という方……私、もしかしてとってお聞きしたいのです」
「なぜ、彼のことを……? 彼が、の私の娘のことについて、君に何か尋ねてきたというのかね?」
「絵里子さんが運ばれてきた、あの夜のことを……」
慈郎は元にあった万を机のに音をてて置いた。そして、ゆっくりとちがると窓辺の方へと歩み寄り、背を向けたまましばらくの、苦しい沈黙が続いた。やがて、慈郎は静かに振り返り、血った目をはる子に向けた。
「川さん……あの清掃員は、私の孫だ。誠。くなった私の娘、絵里子の息子だ。今で歳になり、医学部のになている」
はる子のが、自分の元をわず覆った。
「やはり……そうだったのですね。絵里子さんのお子さんだったのですね……」
「なぜあの子が、わざわざ分を隠して派遣の清掃員として私の病院で働いているのか……ヶに事からの報告で気づいたが、本は何も語ろうとしない。私もずっと聞けずにいたんだ」
はる子は窓際のを見つめた。のあの夜に病院の廊で泣き崩れていたあののが、目のにいる青の姿と完全につになりった。
「理事、私……もうこれ以、黙っているわけにはいきません。この、ずっと胸の奥底に閉じ込めてきました。