"理事長の孫が清掃員になった夜" 第4話
はる子はややかな目を麗子に向けながら言い放った。
「ここは患者様も、そのご族もく通られる切な所です。このような振るいは、しお控えいただきたいのですが」
「あら、川さん、またその派遣の坊やを庇うわけ? あなたって本当にが良すぎるというか、おせっかいな性格なのね」
「庇っているのではありません。彼はいつも誰よりも丁寧に、真面目に仕事をしてくれています。私はただ、その事実を見ているだけです」
「そう言い張るなら、その使えない部のしつけくらい、ちゃんと自分で徹底しておいてちょうだいね。みんな、くわよ」
「はい、先」
麗子はでふんっと笑を浮かべ、の裾をげさにひるがえすと、追従する若医師たちを引き連れてそのをっていった。静まり返った廊に残されたのは、散らばった類を再び拾い直す誠と、それを複雑な表で見守るはる子のだけだった。
「ごめんなさいね、あの方はいつもあんな調子なのよ……」
「いえ、ありがとうございました」
はる子は誠の隣にしゃがみ込み、たいに散らばった類を緒に拾い集め始めた。
そのの夜、の清掃員休憩。誠は使い古されてすり切れた冊のノートをき、几帳面で丁寧な文字でそのの来事と勤務の記録をき加えた。
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ペンを置くと、彼はノートを静かに閉じ、首に嵌められたシルバーのリストバンドを指先でそっと撫でた。
誠が母のことをくう、その記憶の扉は決まってあの悪のような瞬からかれることになる。
今からの夜頃のことだった。当歳だった誠が自の扉をけてリビングにると、そこにいた母・絵里子が自分の胸元を両でく押さえたまま、に崩れ落ちるようにして倒れていた。震える指で受話器を取り、彼は必のいで救急を呼んだ。それから分、けたたましいサイレンの音が静まり返った宅に響き渡り、救急隊員たちが駆けつけて母を担架に乗せ、慌ただしく内へと運び込んだ。
「坊や、お母さんは筋梗塞の疑いがある。今すぐ受け入れてくれる病院を探すからな!」
サイドドアをけ放したまま、隊員は無線をく握りしめて叫んだ。
『こちら救急、歳女性、筋梗塞の疑い。受け入れをお願いします』
無線の向こうから返ってくる返事は、どこも様にたかった。
『1件目、断られた……。2件目も、満のため……』
その頃、桜総病院の夜当直。崎麗子はソファにく体を沈め、い溜息を吐きしていた。夜の以、すでに急患の対応を件もこなしたばかりで、ようやく全員の処置が段落したところだった。
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万のキャップを乱暴にける指先には、隠しきれない苛ちが滲んでいた。
「あぁ、疲れた……。次はもう、何がどうあっても急患なんて受け付けないんだから。私は寝る、誰も起こさないでちょうだい」
吐き捨てられた本音が、静まり返った当直の空気に転がった。その直、けたたましく内線話のベルが鳴り響いた。
「先、救急隊からの請です! 歳女性、筋梗塞の疑いがある患者の受け入れ請が入っています」
「そんなの断ってちょうだい。今夜はもうこっちはが回らないって言ってるでしょ」
「で、でも先、ベッドの空きはまだ……」
「いいから受け入れないでよ。これ以対応させたら朝まで眠れないじゃない。私は休むの!」
はる子はしばらくの、受話器を持ったまま押し黙っていたが、やがて観したように「……はい」とだけ答え、たく内線を切った。
「救急隊の方、お願いします。現のところ、当院での拍の定が見込めないため……ええ、受け入れは困難です。解いたしました、3件目をお探しください」
桜総病院からの受け入れ困難という徹な返事を聞いた瞬、救急の内にいた隊員の表が恐怖に引きつった。
「お母さん、お母さん、しっかりしてくれ!」
宅の脇にエンジンをかけたままでしている救急の赤灯が、向かい側ののい壁に気な点滅を映ししていた。
その絶望な状況ので、幼い誠の脳にある物の顔がく浮かびがった。