みかん小説
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"理事長の孫が清掃員になった夜" 第2話

の空はどこまでもく濁り、くに見えるビル群の輪郭はたい朝にく覆われていた。慈郎の背にあるきな製の机のには、冊の古いアルバムの脇に置かれるようにして、つのフォトフレームが静かに佇んでいた。

そのの学縁ので、慈郎のき娘である絵里子が、穏やかで優しい笑みをたたえて微笑んでいた。それは彼女が歳という若さだった当の写真だった。あれはの、突然の激しい臓発作によってこの病院の救急来に運び込まれ、懸命の処置も虚しくそのまま度と帰らぬとなった々の記憶を呼び起こす。あの夜、慈郎は病院にはおらず、方でのな張先で学会の壇にっていた。にらされたのは、現の医師たちがベストを尽くしたという報告だけだった。もしあの、自分がこの病院に留まっていれば、もし病院全体の隅々にまで自分の目がしっかりとき届いていれば、娘があのような非業のを遂げずに済んだのではないかという烈な自責のが、彼のを蝕み続けていた。あの夜の来事以来、慈郎は自分自を許すことができずにいた。科部の崎麗子は、あのの夜、「私たちはベストを尽くしました」と涙ながらに報告した。その言葉を信じるしか術がなかった当の自分を、彼は呪い続けてきた。

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そして、その信じてきた虚偽ののみが、机のの写真を通じて彼の胸を締め付ける。

写真のすぐ隣には、さらに褪せたもうつの古い写真がてかけられていた。それは学にがるの幼い孫・誠が、若きの母・絵里子の膝のにちょこんと座り、無邪気に笑っている姿をとらえたものだった。、誠の父親はまだ若くして慮の交通事故によってこの世をっていた。それから、母親である絵里子までもが突然のによって奪われた、慈郎は涯孤独となった孫の誠を引き取ったものの、き娘の面を濃く残す孫とどう向きえばよいのか分からず、互いに言葉を交わさないままい歳が流れていた。

「おは今、何を考えてきているのか……」

娘を救えなかったという拭いることのできない悔のが、孫の顔を見るたびに慈郎の胸を鋭く締めつけた。それからというもの、彼は現実から目を背けるようにして仕事へと逃げ込み、理事という分い扉の向こう側に閉じこもるようになった。気がつけば、孫の誠はすでに医学部のという齢に達し、医師国試験をに控える期になっていた。たったき残った血肉であるはずの孫とは、もう何もの、まともに目線すらかわしていなかったのだ。

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その沈黙を破ったのは、通の類だった。に響いた控えめなノックの音とともに、若い女性秘が静かに内にを踏み入れ、枚のきれを恭しく差しした。

「理事、こちら、当院でヶ以働いている派遣スタッフの覧でございます」

慈郎は形式な確認作業のつもりで、その類に線を落とした。しかし、から順に文字を追っていた彼の指先が、あるでピタリときを止めた。そこに記されていたのは、信じがたい名だった。

『誠 歳 夜勤および勤のシフト制清掃員 勤続ヶ』

……それは、のにくなった娘の夫の苗字であり、ならぬ孫の名そのものだった。慈郎はその名から指をせないまま、しばらくの、呼吸すら忘れたように直していた。なぜだ。なぜ自分のする孫が、分を隠してまでこの病院の底辺である清掃員として働いているのか。なぜ私に言の相談も、何のらせもよこさなかったのか。のを無数の疑問とが駆け巡っていく、彼はい腰をげた。

――科病棟のバックヤード、術へと続くい廊の。ちょうど夜勤を終えたばかりの誠が、疲労のを隠せない取りで歩いてくるところだった。紺の統された清掃員用ユニフォームにを包み、栗の髪を揺らすその姿は、き母・絵里子の面を驚くほど濃く宿していた。

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